【マーケターインタビュー】「自分らしく」が認められる社会へ。制服づくりを通し、支援する(2019年12月号)

マーケターインタビュー
2019 Vol.31
【マーケターインタビュー】「自分らしく」が認められる社会へ。制服づくりを通し、支援する(2019年12月号)
160年を超える歴史を持ち、時代の流れに合わせて学校制服やスポーツユニフォームを提供してきた菅公学生服株式会社。

「カラダ」「ココロ」「時代」「学び」の視点で長く制服や体操服などに関する基礎研究を20年以上続けており、専門的な研究機関「カンコー学生工学研究所」を設置した。

社会の多様化、性別にとらわれない考え方が広がってきた今、学生たちにとって価値のある制服・体操服のあり方を模索するカンコー学生工学研究所の三宅利明所長にお話を伺った。
菅公学生服株式会社
カンコー学生工学研究所 所長

三宅利明 (みやけ としあき)

1994年、菅公学生服株式会社に入社。開発事業に携わった後、約20年の営業経験を経て2018年よりカンコー学生工学研究所へ。営業現場で培った経験を生かし、お客さま視点での研究開発を心掛けている。趣味は料理、ゴルフ、愛犬とドッグランで戯れること。
https://kanko-gakuseifuku.co.jp/

「快適な制服」目指しカラダやココロを捉え、製品開発

 制服は、学生や地域を象徴するアイテムであり、識別性はもとより、子どもたちの安全や安心を担保するために有効です。カンコー学生服工学研究所では、身体や動態、着用状況を徹底研究し、さまざまな心理データや実験から学生たちのココロを捉えた製品開発を行なっています。国籍・障がい・アレルギー・体型・成長など多様な学生たちにとって快適な制服づくりを目指し、実践する中で、近年、LGBTに関わる方の声を聞くようになりました。特に、自身の性別に違和を感じるトランスジェンダーの方々が制服に対して悩みを抱えることを知りました。

文科省が学校現場に 性的マイノリティへの配慮求める

 制服には、社会的な流れを受けたさまざまな要望も反映されます。2016年、文部科学省が、教職員向けに「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」という周知資料を通知しました。それを受けて学校現場では、服装、髪型、トイレなど対応の幅を広げています。2018年の電通ダイバーシティ・ラボによるインターネット調査(20〜59歳の方が対象)では、日本のLGBTの方々の割合は8.9%というデータが出ています。これは、仮に30人学級に置き換えると、クラスの2〜3人が性に関する悩みを抱えていることになります。そのような社会の動きに合わせて2016年から、トランスジェンダーの方々を考慮した制服を提案するなど試行錯誤しながら取り組んでいます。
 私が営業現場にいた10年ほど前、中学入学を前にした男子児童に女子の制服を販売してほしいと学校から言われたことがあります。生徒手帳には男子と女子の制服が指定されていた当時、初めての経験でしたが、今思えばトランスジェンダーの方だったと思います。ただ、全てが受け入れられる社会がすぐに訪れるわけではないので、未来のゴールに向かう過程で何がベターか、ベストかを考え続けています。

当事者の方から聞いた声 「制服が嫌」とともに、憧れも

 そこで性別違和を感じている方の声を伺うことが大切と考え、2019年春のGID(性同一性障害)学会に参加しました。そこで当事者のアンケートにご協力いただいた結果、ご自身の性別に違和を感じた年齢は、40.0%の方が「小学校入学前」、82.2%の方が「中学校入学前まで」ということがわかり、多くの方が制服を着用し始める中学入学前に性別に違和を感じていることに改めて気づきました。
 また、「自認の性の制服を着ることができなかったのが嫌だった一方、制服には強い憧れがあった」「制服の前合わせが左前か右前のどちらがいいかということではなく、自由に自分で決められる選択肢がほしい」といった声もありました。性差が出にくいカーディガンの着用、リボンやネクタイが選べるなど、選択肢が増えるだけで気持ちが楽になるといった声から、現実の一端を知る頃ができました。

声を届ける活動をスタート LGBTQへの見識を広めたい

 「性の多様性に応じた制服」として、何が求められているのか、少しずつ分かってきた中で、声を集め、声を届け、LGBTQへの見識を広める活動をスタートしました。その1つとして、男性として生まれ、現在は女優・タレントとして活躍される西原さつきさんと一緒にセミナーを開催し、多様な性について考える機会を提供しています。西原さんが代表講師を務める、「女の子らしく」をかなえるためのレッスンスクール「乙女塾」でも制服についてのお話を伺っています。我々が商品協力させていただいた制服サンプルの試着会を開催した時には、自認の性の制服を着た皆さんがとても楽しそうで、「着たかったものを着ることができて、すごくうれしい。ありがとう」といった言葉もいただきました。自分が認められない辛い時間を過ごし、悩んできた方たちに話を伺うことで、我々は多くの気付きをもらい、人としての本質を勉強させていただいています。男らしく、女らしく、ではなく「自分らしく」。それが認められる社会環境を一緒に作っていくという意識です。
管公学生服が手がけた桜木中学校(東京都世田谷区)の制服は2020年春にリニューアル予定。同柄のスラックス・スカート、ネクタイ・リボンを自由に選択できる

ありのままが認められる社会へ 課題解決し、未来を応援

 制服が着用する子どもたちにとって最適になるよう、子どもたち自身に加え学校のニーズ、保護者の声など多角的な視点を持って商品開発しています。業界に先駆けて「中高校生の体型調査」を実施し、k路絵まで1万人以上の男女の体型調査、身長や各部位のサイズなど成長段階で異なるデータを収集して体型に合わせた設計をしています。着用時だけでなく日頃のお手入れも考え、ドラム式洗濯機でも洗えるよう耐久性を改善し、縫製の新技術導入でストレッチ素材を活用するなどして、機能性を高めています。ファッッショントレンドも研究し、子どもたちの感性を刺激できるブランドとコラボレーションしながら、新しい価値の創造にチャレンジいています。
 激動するよのなかで子どもたちが生きていく力を身に着け、すべての子どもたちのありのままが認められるように。我々は業界の先駆者として時代にあった制服のありよう、価値を提案しながら、ものづくり、ひとづくりを通じて社会課題を解決し、子どもたちの夢や未来への思いを応援していきます。

インタビュー後記

(右)三宅利明さん
(左)インタビュアー日野佳恵子

 インタビューは、岡山駅近くの本社ショールームに伺いました。制服製造の老舗メーカーの側面だけではなく、カンコー学生工学研究所として、学校関係者、保護者、子どもたちとのつながりを大切に、時代に合った制服のあり方を考え続けられている姿勢に本当に学ぶことが多かったです。中でも今回のテーマは、子どもたちが「着たい制服を選べる」という社会に向けての取り組み。男子だから・女子だから、ではなく「自分らしく」が認められる社会に向かって、制服として何ができるのかを真剣に研究しておられる研究員のみなさまに多くの学びをいただきました。
Interviewer
株式会社ハー・ストーリィ代表取締役
日野 佳恵子

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