【マーケターインタビュー】世界的ヒット商品は唯一無二のアイデアから。令和の商品開発は企画力の強化を(2019年7月号)

マーケターインタビュー
2019 Vol.26
【マーケターインタビュー】世界的ヒット商品は唯一無二のアイデアから。令和の商品開発は企画力の強化を(2019年7月号)
世界トップレベルといわれた日本の技術力だが、アジア諸国の技術力向上は見過ごせるものではない。技術大国・日本が令和を迎えて目指すべき方向性は何か。

その鍵のひとつは商品企画にあるとして、国内でも数少ない商品企画の権威、成城大学経済学部経営学科の神田範明教授にお話を伺った。
成城大学経済学部経営学科
教授
神田範明 (かんだ のりあき)

1979年東京工業大学大学院理工学研究科博士課程を修了 (経営工学専攻)、1993年より成城大学で教鞭をとる。多数の機関で商品企画・開発関係の講師歴任。自動車・家電・食品・生活用品・印刷・IT等の有力企業の商品企画を指導し、産学協同商品企画も多数実施。2012年、商品企画関係で唯一の資格制度「商品企画士」を創設。

商品企画は世界的にも未知の領域 「商品企画七つ道具」での成功事例

日本では品質管理について、特に製造業において盛んに研究が行われており、設計や生産、販売にまで品質管理の手法が取り入れられてきました。

しかし、その前段階の商品企画は誰も研究しておらず、それは世界的にも同じで、専門書もほとんどない未知の領域でした。

そこで、工程図を描くのと同じように商品企画をシステム化できないかと研究を始め、1994年にあるシンポジウムで成果を発表して好評を得たのを機に、1995年に『商品企画七つ道具-新商品開発のためのツール集-』(日科技連出版社)を出版しました。そこからいくつかの企業と共に産学連携で本格的に研究を進めていき、2000年に3冊分の解説書の出版を経て、2010年頃までには大きな成功事例も生まれました。

例えば日産自動車の「X-TRAIL」や、アサヒ飲料の「ワンダモーニングショット」はご存知の方も多いと思います。筆記用具で有名なパイロットの「クレオロール」というクレヨンも、手が汚れないリフィル式で好評を得てロングセラーになっています。

神田教授が出版した書籍と、商品企画に携わった「ワンダモーニングショット」「クレオロール」

「こうあるべき」が発想を狭める 突破口は100個のアイデア出し

日本は技術が優秀でも企画が不得意な企業が多くあります。特に役職を占める中高年の男性には、「こうであるべき」という思考があって、そもそも発想が狭く、いいアイデアが出てこないように感じます。

しかしそれではいい商品開発はできないので、2013年に発行した『神田教授の商品企画ゼミナール -Neo P7 ヒット商品を生むシステム-』という本では、仮説の発掘やアイデアを発想する方法を最初のステップに出して、企画全体の流れをつくり直しました。やり方さえ学べば、1プロジェクトで100から200のアイデアを必ず出すことができるようになります。

2018年、中国・広州の大手自動車会社に呼ばれて講演をしてきましたが、彼らの学ぶ意欲は非常に高かった。日本はこれから技術的にもさらに高いものを目指すと共に、誰も思いつかないレベルのアイデアをどんどん出せるようにならなければいけません。

技術とアイデア、この2点を共に強化すれば世界的な大ヒット商品を作ることは十分可能です。日本の技術力はやはり世界トップクラスですからね。

商品企画のアプローチは共通 学び、実践すれば成果は出せる

成功する商品企画のやり方は、大企業でも中小企業でも同じことです。

先述の日産自動車では、ルノーと提携する3年ほど前に相談を受けました。商品企画のシステムが体系だっておらず、社内標準として共通認識に足るものをつくりたいとのことで、まず3日間の社内講習会からスタートしました。

しかし、大企業ほど参加者全員が足並みをそろえて理解することは難しく、簡単なものではありませんでした。組織が大きいほど成功事例で納得させることが必要になりますし、それには時間もかかります。

中小企業の例ですと、東京都内で2店舗を経営する従業員10人ほどの美容院の例があります。顧客満足度を高めたいという相談を受け、当時大学4年生だったゼミ生のうち2人の女子学生と共にお店を訪れました。そこからグループインタビューや顧客アンケートなどを四苦八苦しながら進めていき、集まったデータをこちらが最終的に分析して結果をお渡ししたところ、大変に喜ばれました。

実際、顧客満足度も目に見えて向上したので、この小さな産学連携は大成功でした。7~8カ月ほどかかりましたが、企業の規模に関係なく、システマティックな商品企画のアプローチが成果を出せると確信できたケースです。

産学協同研究で神田ゼミの学生が企業の担当者に向けて発表している様子

消費者ニーズに応えるために、 商品企画から女性の考えを反映

商品企画に限ったことではありませんが、基本的には消費者ニーズに応えることです。

そして、毎年いろいろな企画に携わっていますが、もっと女性の考えを反映させるべきだと思います。SNSが発達して以前よりも女性の考えを拾いやすくなったとはいえ、女性向け商品なら企画メンバーに必ず女性を1人以上入れるなど、もっと力を入れてもいいのではないでしょうか。

また、女性は分析や論理的な説明は不得意な傾向があります。男女差を完全になくすことや不得意を克服することは容易ではありません。しかし、勉強したりトレーニングや体験を通じたりして商品企画の面白さが分かると、女性でも十分に活躍できます。

商品企画ではデータを扱いますが、データを読み解くことは数学というよりパズルを解くことに近く、やりだすとすごく面白いんですね。学ぶ機会があれば誰でもできるようになります。その上で、例えば「この商品を発売すれば購入意向は4.6で、昨年より大幅な売り上げ増が確実である」といった論理的なプレゼンができれば、男性の上司も納得させられるでしょう。

商品企画の最大の伴は経験の蓄積 アイデアは体験から生まれるもの

これから企業では、商品企画担当者のレベルアップが必須です。消費者と同じ目線では想像を超える驚きや画期的なアイデアは生まれません。

そのために日々さまざまな経験を蓄積することが必要です。本などの知識のみではなく、身をもって五感で体感すると、それが良い刺激となってアイデアが生まれます。豊富な経験を重ねる一方、分析手法や発想技術も磨く。大変ですが、これが商品企画における最も望ましい姿勢だと思います。

2015年6月~2016年2月に行ったハー・ストーリィとの産学協同研究チーム(前列が神田教授と学生)

毎年、多数の企業と学生の協同研究を行ってきた

インタビュー後記

売れる商品やサービスを創り続けることは企業にとっての生命線です。ヒットに一喜一憂し、売れ行きが業績に直結します。

そんな生命線でありながら、意外にも「売れる商品を創り出す」ことに対して社内に体系的な仕組みがない、という企業には私も多く出会います。神田範明教授は、それを体系化された、日本では希少な専門家です。私も先生の画期的な書籍に感銘を受けた一人で、書籍、講演、交流、産学共同など多数のご協力をいただいています。

近々、神田範明教授の「商品企画講座」を企画中。みなさまお楽しみに!
Interviewer
株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役
日野 佳恵子

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