日野佳恵子へのインタビュー2弾「女性マーケティングを活かしたファンサイト構築の先駆け企業となる」

マーケターインタビュー
Vol.
日野佳恵子へのインタビュー2弾「女性マーケティングを活かしたファンサイト構築の先駆け企業となる」
HERSTORY REVIEWを運営している株式会社ハー・ストーリィ代表、日野佳恵子へのインタビュー第2弾です。
口コミを使ってどうやってビジネスを大きくしたか、また、WEBの時代の到来に際して、どういった思考でビジネスを展開していったかを話してもらっています。
現代においても参考になる内容が多くはいっておりますので、ぜひご覧ください。
第1弾はこちらから

ネット時代の到来、会報紙からメルマガへ

ー会社設立後、たびたびメディアに取り上げられたり、口コミで広がって会員数は順調に増えたようですね。
日野:創業から7年後の1997年には、人づてに集まった会員が広島県下で3000人を超えていました。そうこうしているうちに数年後には、インターネットが社会的に広がったことを見て自社ホームページを開設したら、わずか1カ月で全国各地から登録があり、目を疑いました。

ホームページを制作してくれた女性が「私が作ったサイトを見て」とさまざまなサイトの掲示板などに書き込みをしていたらしく、そのサイトを見に来た女性たちや在宅ワーカーの人が私の会社に関心を持ってそのまま登録してくれた、ということのようです。

情報収集のため、私はネットを勉強するコミュニティのメーリングリストにも参加していたのですが、ここでも口コミ効果やメールマガジンの影響力の大きさを目の当たりにします。

メンバーの中にはメルマガを発行している人が何人もいて、発行者が記事として私の会社を取り上げてくれると急激にアクセスが増えました。

こうしたインターネットならではのスピーディな拡散力は、電話やFAX、宅配、郵便を使って仕事をしていた私にとっては衝撃でした。

そして、会員に送り続けていた紙の会報紙が不要になるかもしれないと気付いた時は、感動しました!2台のコピー機で印刷し、封筒に切手を貼って郵送する毎月の作業量とコストは大きな負担でしたから。

その大変さを会報紙で伝えた時には、全国からテレホンカードや切手が山のように届き(笑)、こういう女性ならではの気遣いはありがたくもありました。

とはいえ、作業の軽減を考え、紙からネットに移行することを決め、2001年1月に「さようなら号」として最後の会報紙を発行し、「ネットで会いましょう」と宣言したのです。

家電量販店でママ向けパソコン教室開催

ー突然のメルマガ配信宣言に、会員の方の反応はいかがでしたか?
日野:当時、会員1万人のうち9割がパソコンを持っていませんでしたが、あえて新しいツールに踏み切りました。メルマガ配信宣言をして間もなく、地元の家電量販店のPC売り場から事務所に電話がありました。

「そちらの会員の女性たちが次々にパソコンを購入され、パソコンの使い方を知りたい、インターネットやメルマガについて教えて欲しいと言われます。

うちは人手が足りないので、パソコン教室を受託してくれませんか」という内容でした。1週間で驚くほどの数のパソコンが売れたようです。

そこで、家電量販店からワンフロアの提供を受け、当社からインストラクターを派遣し、ママのためのパソコン教室を始めたんです。ここから、ネットに強い会員はパソコンのインストラクターになっていきます。

注目を浴びた「ポイント付きサイト」

ー会報紙を受け取っていた女性たちは、メルマガで情報を得るために自らステップアップしたというエピソードですね。ホームページ開設後、どのような展開がありましたか。
日野:ホームページ開設から3年以上、私はネットビジネスの可能性に関心が湧き、どっぷりハマりました。視覚に訴えるwebサイトの画面とメール、クチコミを体系化するとすごいことになるんじゃないか、と考えたんです。

仕事としては、インターネットで集めた大勢の主婦をリアルに活用し、法人から受託した仕事を、調査→企画→制作→実行という流れで事業を行うようになりました。

そして2001年秋、女性向けのwebアンケートサイト「集まれご意見ネット」を立ち上げます。このサイトに女性に見て欲しい情報を置き、メールで会員にURLを送ります。

会員はネット上のアンケート調査やグループインタビュー、サンプリングなどに応じるたびにポイントが付くシステムで、1ポイントを1円とし、500円以上貯まると換金できます。

これによりアンケート調査、キャンペーンの告知、プロモーション、リクルーティングなどを一瞬にして告知し、情報を回収できるようになりました。

このビジネスモデルは2001年、ネットベンチャーとして情報革命に貢献したということで(社)広島県情報産業協会インターネットビジネスモデルの最優秀賞をいただきました。

もう一つ、主婦の在宅ワーカー登録サイト「ワムネット」も作りました。結婚や出産を機に家庭に入った女性たちに、専門の仕事をお願いするサイトです。主にweb制作、デザイン、イラスト、データ入力や分析を行う人達が会員で、法人から仕事を受託したら、登録会員たちでプロジェクトチームを作り、会員の中から弊社が任命した契約ディレクターを軸に実働するのが特徴です。このインターネット上でのプロジェクトの作り方は、福岡市のネットベンチャー、株式会社ペンシルの覚田義明社長からご指導いただきました。こうしてインターネットで出会った見知らぬ主婦たちを戦力とし、プロジェクトを作って業務を遂行し、企業ニーズに応えるマーケティングを実現する私たちのビジネスモデルが実現しました。

各地に“種”が飛び、支部を開設

ー社会的なネットの普及をにらみながら先進的なネット事業を展開したのですね。一方で、会員の皆さんの動きはいかがでしたか。
日野:広島から夫の転勤で各地に散った会員からはハー・ストーリィと同様の組織を作りたいという声が届きました。

そこで、インターネットの本格導入を前にした1998年から2000年にかけて全国15カ所に支部を作りました。支部とは言ってもロイヤリティ無しで、顔を会わせる交流会などのオフ会を主催するといったことです。ハー・ストーリィで学んだように、ケーキ屋さんに行ってサンプルをもらったり、企業に弁当代や足代を出してもらって講座を開くんです。

すると、お菓子や商品がもらえるらしいと口コミが広がり、100人が300人に、1,000人へと増えるわけです。まるでクチコミの種が飛んでいったかのようにあちこちで支部が生まれました。種となる人、シーダーが動くとクチコミの種も飛ぶのだと知りました。

会社設立10年目の2000年、有限会社から株式会社へ組織改編します。この頃、社員手帳も作っていたのですが、葡萄の房をシンボルマークにしていました。各地に離れても、葡萄の幹は繋がっているし、ひと粒ひと粒が美味しい実になろう!そんな思いを込めていました。インターネットを中心にしたネットワークに変えてから支部は解散しましたが、全国に心強い仲間ができました。

メルマガ発行後、広島から各地に散った会員は、今で言うインフルエンサーになって情報を拡散してくれました。

2001年のメルマガ開始時に1000人に減った会員は、そのインフルエンサーたちの発信などにより2003年には会員数が全国で1万人に戻ります。

地方の二人の主婦が始めた会社が、いつの間にか全国にクチコミで広がっていることでクチコミの力を実感し、私は「クチコミュニティ」という単語を作り、商標登録します。リクツは簡単で、偶発的に起こると考えられていたクチコミを、「コミュニティ」という場の中で意図的に起こしていこうというものです。さらに、多くの企業にご提案する「お客様のクチコミで会社を伸ばす方法」を「クチコミュニティー・マーケティング」と名付け、2002年には『クチコミュニティ・マーケティング』(朝日新聞出版)を出版し、ベストセラーになりました。翌年には『クチコミュ入ティ・マーケティング2』(同)という本を出します。いずれも、イラストはさとうが描きました。

知名度と数が奏功し、商品テストの依頼続々

ー全国に飛んだシーダーの皆さんの発信で、さまざまな地域に「ハー・ストーリィ」の名前が知られるようになったのですね。その後、さらに仕事の規模が大きくなりましたが、背景になる何かがありましたか。
日野:経営者として振り返ると、「数」を持つことは強いと改めて思います。広島という地方都市で二人が始めた会社に、主婦が300人、1000人に、10,000人と集まり、最後は5万人くらいになるんです。

当時は会員数を名刺に記載し、数が増えるたび作り替えていました。

また、これが偶然なのですが、広島は静岡と並ぶナショナルブランドのテストマーケティングの拠点都市なんです。
私たちの団体や取り組みを知った大手の食品や飲料メーカーから、大手広告代理店を通して私たちに商品テストの依頼が入るようになります。

マスコミに取り上げられて知名度が上がっていたことで、営業しなくても仕事が舞い込みました。女性だからという視点ではなく、ビジネスにおけるイノベーション、革新的だったことから何度も取材されました。

それにより認知されるスピードが速く、しかも消費者を大量に組織していたので主婦が購入する生活に密着した食品や消費財、子ども用品、食品関連のメーカーからコンタクトが舞い込みました。

さらに、広島には全国区で知られるナショナルブランドの本社もあり、東京に強いパイプを持つ広島本社の全国区の企業との繋がりもじわじわ拡大していきました。

ネット事業に注目、大手企業と取引も

ーインターネットを活用していたことも、仕事の拡大につながりましたか。
日野:私がwebサイトを作った1998年は業界的には決して早くはありませんでしたが、インターネットに強い会社という印象を持たれ、特に女性企業は少なかったこともあり、2000年頃にはネットバブルの恩恵に浴することができました。

お陰で、広告代理店を通さず直接取引をする企業も増え、大手企業から女性向けコミュニティサイトのコンテンツ制作が大口で数本入りました。

嬉しい悲鳴をあげつつ、慣れないことだらけで大パニックになりながら仕事をこなす日が続きました。

その先駆けとして、有名なコンサルタントの方が、当時、大きなショッピングサイトをオープンする時、私たちにお声掛けくださいました。

各地の複数のスーパーマーケットと提携して生鮮食料品を宅配で届けるシステムで、ユーザーはカタログと小型バーコードリーダーで欲しい商品を素早く発注できるというものです。

そこに、全国の主婦が登録しているネット系コミュニティが提携しているということで私たちも2000年の記者発表に同席します。そこから、ハー・ストーリィの名前が大きく全国に向けて発信されるようになりました。

「ファンサイト」で企業と顧客をつなぐ

ーエリアが限定的でなく、年代も幅広く、そして他にない人数の女性たちをネットワークしていたことが大きな強みになったのですね。その後、どのような企業との仕事が続きましたか。
日野:その発表を契機に女性の集め方やポイントシステムなどについて問い合わせやオファーが増え、さまざまな大手企業のサイトを通したマーケティングにかかわる仕事をさせていただくようになりました。

各企業とやりとりする中でクチコミがファンを拡大させ、サイトを活性化させる状況を目の当たりにしたことから、2005年に『ファンサイトマーケティングー企業のファンがネットの「クチコミ」で増えていく!』(ダイヤモンド社)という本にまとめました。

その中でご紹介している一例に、ダスキンがあります。「ハー・ストーリィさんのようなサイトが欲しい」といわれ、ダスキンがネットワークする全企業を支援する「マーケティングプラットフォーム」という位置づけのサイトづくりをお手伝いしました。

「ネットを主軸としたビジネスのようで、実はリアルな活動が中心になっている」という私たちのビジネススタイルを評価されてのことでした。

ここでは、参加者同士がおしゃべりするなどコミュニケーションが中心で横に広がっていくコミュニティサイトではなく、企業がネットのほか、リアルな意見交換会、オフ会、商品モニターなどを通して生活者とダイレクトにつながることで意識の変化をつかみ、商品開発のヒントをもらいます。

アクセスする側は自分の思いや商品の使い勝手を企業に伝えることで良い商品・サービスを提供してもらえるという実感を持ち、ファンになります。

そんなウィンウィンな関係が培われるこのサイトの仕事を通して、「ファンサイト」と呼ぶことが頭に浮かび、「ファンサイトマーケティング」という名前も作りました。ここには、ITバブル期以降に広がっていた「コミュニティサイトは儲からない」というイメージを払拭したい思いもありました。

この頃から、私の意識は在宅ワークから離れ、声や意見を集めるという方向に変わります。もともと私もさとうも会社を始めるにあたり、仕事がしたいという思いのほかに、ママや妻という待遇の中で「自分」を見つけていく方法、そしていろんなライフスタイル、生き方があることを社会に伝えたかったことを思い出して、目が覚めます。

取引拡大に伴い、東京支社を開設

ー「ファンサイト」では、「企業とファン」がネットとリアルの両方で、双方向のやり取りを深めることができるのですね。まさにウィンウィン、ですね。他にも例があれば教えてください。
日野:同じ著書で紹介していますが、2003年秋には、女性のクチコミを取り入れてファンを増やすことを考えていたキリンビールからご相談を受けました。

消費者と直接出会うイベントや企画を実施し、参加した人達に会員になっていただき、クチコミをしてくれるコアなファン「ビアジェンヌ」を増やすことが目的です。あくまでもリアルを中心にコミュニティを作り、インターネットはその関係を補完するツールとして位置づけました。

発足時に集められた女性社員たちが日常業務と兼務しながら会合を持ち、ビールやワイン、発泡酒などをテーマにしたイベントを企画、実施します。このサイトの特徴は、イベント参加者だけに「ビアジェンヌ」のサイトを紹介することで、サイトを知った女性が友人知人にクチコミして会員が増えています。
ー大手企業との仕事の拡大やネット関連で評価されたことで、ご自身の仕事の幅、会社のあり方に変化はありましたか。
日野:その頃、東京渋谷を中心にした「ビットバレー」ト呼ばれるネット系ベンチャーの集まりが話題になりました。広島の情報系の方たちがビットバレーを真似た中国地方版の組織「五空(ごくう)」を作り、私は広島情報産業協会の賞をいただいていたこともあり、初代の運営委員長になりました。

全国で同様の組織が5、6カ所ありましたが女性代表は私一人で目立ったこともあり、全国のネットベンチャーと出会い、人脈もぐんと広がりました。

東京での仕事も増えたので2003年には東京・高輪に支社を作りました。会員数10万人、売上高8億円規模に成長、2006年には外部資本も受け、株式上場を意識するまでになっていました。

本を数冊出したことで私の講演も多く、明るい展望が開けていました。
現代でも当たり前となったファンサイトの先駆けとなる事例をハー・ストーリィでは多くかかわってきました。
ビジネスとしての新しさに注目したわけではなく、一般の人にとって必要なものを考えた結果が、
企業にとってのニーズともなり、ファンサイトを作るにいたってきました。
拡大したハー・ストーリィの激動の変化を次回ではお話します。第3段はこちらから

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