【マーケターインタビュー】「いまだけ、ここだけ、あなただけ」アンノン族の目にかなう商品づくりが大切(2019年5月号)

マーケターインタビュー
2019 Vol.24
【マーケターインタビュー】「いまだけ、ここだけ、あなただけ」アンノン族の目にかなう商品づくりが大切(2019年5月号)
女性ファッション誌の代名詞ともいえる『an・an』と『non-no』は、両誌ともに創刊から半世紀を迎える。

1970年代、雑誌を片手に日本中を旅した女性たちはアンノン族と呼ばれ、現在は60代以上が中心だ。 時代は変わってもそのアクティブさは変わらず、従来の「シニア」のイメージを覆そうとしている。

自身もアンノン族であり、『non-no』編集長も務めた中山真理子氏にお話を伺った。
株式会社Project8
常務取締役
中山真理子(なかやま まりこ)


1954年生まれ。1978年株式会社集英社入社、『non-no』『MEN'S NON-NO』編集部を経て、2001年『MORE』編集長。2004年『non-no』編集長、第6編集部部長を歴任、2011年ブランド事業部部長。2015年に集英社を退職、集英社の女性誌ファッション通販サイト「FLAG SHOP」などを運営する株式会社Project8の役員に就任。2018年より現職。

https://www.project8.co.jp/

日本女性を変えたアンノン族衣食住旅、そして自立の目覚め

『 an・an』と『non-no』は 、1970年に開催された大阪万博と国鉄の「ディスカバー・ジャパン」キャンペーンの機運の中で、20歳前後の若い女性をターゲットに衣食住と旅を扱うファッション誌として、それぞれ1970年、1971年に創刊されました。

女性が自分の感性でプレタポルテ(高級な既製服)を選び、軽井沢や小京都へ雑誌を片手に旅に出るということは、それまでの職業婦人や良妻賢母になるというイメージに比べると非常に自由かつアクティブで、画期的なことでした。

アメリカのウーマン・リブ(女性解放運動)の影響もあり、高度経済成長で新しいものが次々と生み出される時代に、女性たちは初めて「自分の感性で選んでいいんだ」と気がつき、自立し始めたのです。私も学生時代は夢中になって読みましたし、山口県・萩、島根県・津和野、福井県・小浜、リュックを背負って九州まで、いろんなところへ旅もしました。
1970年代の『non-no』誌面。軽井沢や京都、ペンションといった特集が盛んに組まれた

時代は「いまだけ、ここだけ、あなただけ」これからのビジネスの在り方

消費は「いまだけ、ここだけ、あなただけ」の時代になってきました。「限定」や「ライブ」といったキーワードはその象徴ですよね。もはやニーズを世代で区切ることはできません。

同じテイストを好む中に、若い子も私たちもいるんです。さらにその中でも、シングルになったり、孫の面倒を見たり、自分の習い事をしたりと、私たちのライフスタイルは一様ではありません。

今はもう「100万人に大ヒット!」というものは生まれませんが、もしアンノン族をターゲットとして押さえていきたいなら、小規模でもいいから彼女たちの気持ちにフィットするものを展開していくのをよしとすることです。

60代になったアンノン族は、「自分の感性で選ぶ楽しさ」を知っています。日本中を旅して、目も肥えて、ほとんどのものを持っています。衣食住と旅への興味も変わらずですが、特に今は健康や、ちょっと知的なことに興味を持っています。それに応えるには、大衆向けに打ち出すのではなく、アンノン族に限定したマーケットに向けてビジネスをするという企業の在り方が必要です。

アンノン族のニーズまで「あと3歩」まだまだ改善の余地あり

今はホテルに行っても、レストランに行っても、「もうあと3歩、惜しい!」と気になってしまうものが多いですね。

接客の仕方や、階段の作り方とか、あとは食事の量もそうです。いろんな種類をたくさん食べたいんだけど、コース料理なんかだと一皿の量が多いんです。半分とまでは行かなくとも、しつこくなくて、ちょっとずつがいくつかあるとか、野菜が多めとかだとうれしいですね。

洋服も探すのがおっくうになって、もっぱらお気に入りの店員さんがいる店でそろえるようにしているんですが、今は店員さんも声をかけてこなかったりしますよね。でも私たちは声をかけてもらってOKです。むしろ「◯◯様、いらっしゃいませ」とか「こちらのブラウスは前にお求めいただいた◯◯に合うと思いますよ」とか言ってほしいくらいです。こちらのことを適度に気遣ってくれる対応が大事だと思います。

これからの日本は若者が減少していくのだから、いまのうちに企業はアンノン族世代にしっかりビジネスをして稼がなければならないわけだし、改善の余地はたくさんあると思います。

本音と建前の使い分けアンノン族の気持ちに応える

私たちはシルバーと呼ばれておとなしくしている世代じゃないし、きれいにしているし、まだまだ元気です。衣食住すべて、まだまだ強い関心があります。そんなときに気をつけてほしいのが打ち出し方。

例えばスニーカーも、「シルバーのあなたに向けて」なんて言われるとNGです。ネーミングや言い回しが重要で、「若い子たちも履いていて、でも衝撃吸収にも優れているからアンノン族世代の方にも人気なんです」と言われたら「そうなの?」と興味を持つ。

「誰でもいいんですよ」という体で、「でも実はここに特化している」という裏テーマを持ち、そして対面で接客するときにはその裏テーマをはっきり伝えてもいいんです。ブラウスにしても、若い子向けには袖がタイトで、アンノン族世代向けには、ゆったりしているとか。やっぱり体形は変わってきますから、パッと見て同じデザインのブラウスでも、実はそのようになっていると、「いいね!」となるわけです。

そして、「いまだけ、ここだけ、あなただけ」に応える。

私の友人が銀座でメーキャップを教えていますが、「若い頃に教えてもらったメークはできるけど、今の私にはどんなメークが合うのかしら」と、90歳の方もお見えになるんです。自分に合うメークや髪形を知りたいというニーズは何歳になってもありますね。

アンノン族の生の声を現場に取り入れる消費者不在の商品開発を見直そう

世の中の商品やサービスを見ていると、きっと企業の人たちもわからないんだと思います。会社は60歳で定年でしょう? だから、私たち世代の人が実際の商品企画の現場にいないんですよね。自分の親を思い浮かべ、「こうだろうなあ」というイメージで作っているから、3歩足りない。

具体的にどう言ってほしいのか、どう工夫してほしいのか、どんなものが欲しいのか、生の声を直接聞く。私も編集部時代にはとにかく読者の声を聞いて、何を求めているのか、何に困っているのかを集めて雑誌を作っていました。だから、パートでもいいからもっと私たち世代をうまく活用して、生の声を生かしてほしいなと思います。

いままでアメリカやヨーロッパの流れを取り入れてきた日本ですが、これからはお手本がありません。アンノン族のように元気な60代以上の女性が増える日本が、世界のお手本になる時代です。
中山さんは現在、女性の気持ちに寄り添う視点で、日本郵便株式会社、株式会社ABC Cooking Studioなどの冊子、コンセプト作りを手がけている

インタビュー後記

中山さんのプロフィールに誕生年がありますが、あえて年齢を書くと65歳!かっこいい、おしゃれ、すてき!こんな女性になりたい、と心から思いました。

女性雑誌初のファッション誌として登場した『an・an』 、『non-no』。

中山さんが高校生の頃、授業中に机の下でこっそりと発売したばかりの雑誌のページをめくっては、心躍らせて、その世界観にあこがれたそうです。そして萩、津和野、金沢、清里とあちこち歩き回り、乾いたスポンジが水を吸うように新しい情報を吸収したといいます。

年月の経過とともにあらゆる物を吸収した目利き世代。新シニア層はパワフルと実感の取材時間でした。
Interviewer
株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役
日野 佳恵子

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