【マーケターインタビュー】対談:青木幸弘教授「ライフスタイル」VS「ライフコース」なのか(2017年8月号)
マーケターインタビュー
2017 Vol.3

シリーズ ─ 新・女性消費リーダーを探る
学習院大学青木幸弘教授の研究室とHERSTORYのシンクタンク「女性のあした研究所」の共同で、複雑に変化する女性像をリアルな姿に見える化するプロセスをシリーズで紹介します。
学習院大学青木幸弘教授の研究室とHERSTORYのシンクタンク「女性のあした研究所」の共同で、複雑に変化する女性像をリアルな姿に見える化するプロセスをシリーズで紹介します。
横山 顕弘(よこやま あきひろ)
株式会社ハー・ストーリィ 取締役/シンクタンク「女性のあした研究所」所長
関西大学工学部卒業後、デロイトトーマツコンサルティングに入社。2007年、(株)ハー・ストーリィに入社。16年より現職。
関西大学工学部卒業後、デロイトトーマツコンサルティングに入社。2007年、(株)ハー・ストーリィに入社。16年より現職。
青木 幸弘(あおき ゆきひろ)
学習院大学 経済学部 経営学科 教授/経済学部長
一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。関西学院大学商学部助教授を経て、1995年より現職。専門はマーケティング。特に消費者行動論、ブランド戦略。
一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。関西学院大学商学部助教授を経て、1995年より現職。専門はマーケティング。特に消費者行動論、ブランド戦略。
対談(第3回):「ライフスタイル」VS「ライフコース」なのか
ライフコースは動画。ライフスタイルは静止画
横山 近年、ライフスタイルの多様化が進んでいると言われます。まずは、ライフスタイルとライフコースはどのような関係があるか教えていただけないでしょうか。
青木 この図を見てください。
青木 この図を見てください。
(図)ライフコース×ライフサイクル(ステージ)
【女性のライフコースが分岐していく事で、ライフスタイルも多様化する】
●ライフスタイルの多様性を、まずはライフコースで説明し、ライフステージで分解する。
●ライフコースに着目することにより、独自調査することなく、量的・質的なセグメントをある程度見通すことが可能。
青木 ライフスタイルの多様性を、まずはライフコースで説明します。そして、ライフステージで分解するのです。すなわち「ライフステージ」というのはライフコース上の1つの段階のことであり、「ライフスタイル」というのは、そこに見られる生活の一断面、一局面ということになります。
ライフコースは動画・ムービーであり、ライフスタイルは静止画・スナップ写真というたとえも可能かと思います。生活の一断面を切り取った静止画には静止画なりの良さがあります。静止画、動画どちらか一方が良い悪いの話ではなく、それぞれの特徴を理解し活用していく必要があります。
横山 動画と静止画にたとえると、とてもわかりやすいですね。では、次に、ライフスタイルの多様化という言葉を聞く機会が増えています。多様化の背景にはどのようなものがあるのでしょうか?
青木 女性のライフスタイルの多様化を、まずはライフコースの多様化でとらえると理解しやすいと思います。そして、ライフコースの多様化の背景には3つの要因があると考えています。
第1に、長寿化によるライフサイクル自体の長期化。女性の平均寿命は、1950年の62歳から現在は87歳と大きく伸びていますよね。その結果、ライフサイクルの複線化が進んだということがいえます。
第2に女性の働き方の変化。雇用労働者化による経済的基盤の確立は、非婚就業型のライフコースの増大につながりました。また、最近では女性の非正規雇用者が増えており、「女女格差」の拡大といった面もでてきています。
第3は、適齢期規範などの規範意識の変化・弱化。これが、非婚化、晩婚化、少産化、晩産化につながり、ライフコース・パターンの多様化につながりました。
この3要因が複合的に影響し、女性のライフコースが急速に多様化し始めていると言えます。結果、ライフコース上の一局面であるライフスタイルも多様化しているのです。このように、女性のライフコースの変化は、市場構造変化の源ととらえるよいでしょう。
横山 社会の多様化、女性市場の構造変化の原因やメカニズムを個人のライフコース選択と結び付けて解き明かしてくライフコース視点のアプローチは、全体を俯瞰しながらも女性客一人一人をリアルにとらえる私たちハー・ストーリィの強みとも一致します。一生涯という長期的な時間軸で女性の生活と消費をとらえ、マーケティング戦略に活用していく視点がライフコースマーケティングですね。
青木 多くの企業は生涯顧客価値などと言いながらも、現実的には限られたスパンの中でしか見ていません。①一生付き合うマーケティング②顧客の一生涯を考えたマーケティング③今稼ぐ。刹那的なマーケティング。この全てが大事ですが、現在は、一生付き合う、一生涯を考える、ライフコース・パースペクティブ※がより重要になっているのではないでしょうか。
横山 はい。一時的な利益だけでなく、刈るから耕す・育てるような視点で、トータルリターンをとらえていく事がより求められていると感じています。まさに、現在開発を進めているライフコース視点を取り入れたペルソナが、生涯顧客化の一翼を担うと考えています。
ライフコースは動画・ムービーであり、ライフスタイルは静止画・スナップ写真というたとえも可能かと思います。生活の一断面を切り取った静止画には静止画なりの良さがあります。静止画、動画どちらか一方が良い悪いの話ではなく、それぞれの特徴を理解し活用していく必要があります。
横山 動画と静止画にたとえると、とてもわかりやすいですね。では、次に、ライフスタイルの多様化という言葉を聞く機会が増えています。多様化の背景にはどのようなものがあるのでしょうか?
青木 女性のライフスタイルの多様化を、まずはライフコースの多様化でとらえると理解しやすいと思います。そして、ライフコースの多様化の背景には3つの要因があると考えています。
第1に、長寿化によるライフサイクル自体の長期化。女性の平均寿命は、1950年の62歳から現在は87歳と大きく伸びていますよね。その結果、ライフサイクルの複線化が進んだということがいえます。
第2に女性の働き方の変化。雇用労働者化による経済的基盤の確立は、非婚就業型のライフコースの増大につながりました。また、最近では女性の非正規雇用者が増えており、「女女格差」の拡大といった面もでてきています。
第3は、適齢期規範などの規範意識の変化・弱化。これが、非婚化、晩婚化、少産化、晩産化につながり、ライフコース・パターンの多様化につながりました。
この3要因が複合的に影響し、女性のライフコースが急速に多様化し始めていると言えます。結果、ライフコース上の一局面であるライフスタイルも多様化しているのです。このように、女性のライフコースの変化は、市場構造変化の源ととらえるよいでしょう。
横山 社会の多様化、女性市場の構造変化の原因やメカニズムを個人のライフコース選択と結び付けて解き明かしてくライフコース視点のアプローチは、全体を俯瞰しながらも女性客一人一人をリアルにとらえる私たちハー・ストーリィの強みとも一致します。一生涯という長期的な時間軸で女性の生活と消費をとらえ、マーケティング戦略に活用していく視点がライフコースマーケティングですね。
青木 多くの企業は生涯顧客価値などと言いながらも、現実的には限られたスパンの中でしか見ていません。①一生付き合うマーケティング②顧客の一生涯を考えたマーケティング③今稼ぐ。刹那的なマーケティング。この全てが大事ですが、現在は、一生付き合う、一生涯を考える、ライフコース・パースペクティブ※がより重要になっているのではないでしょうか。
横山 はい。一時的な利益だけでなく、刈るから耕す・育てるような視点で、トータルリターンをとらえていく事がより求められていると感じています。まさに、現在開発を進めているライフコース視点を取り入れたペルソナが、生涯顧客化の一翼を担うと考えています。
※ライフコース・パースペクティブ = 人の一生涯を見ていくという視点
【対談(第1回)】女性はターゲットではなく、ライフコースで見分ける(2017年6月号)

<対談相手>株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役 日野 佳恵子
【対談(第2回)】現代女性とライフコースマーケティング(2017年7月号)

<対談相手>学習院大学 青木 幸弘(あおき ゆきひろ)教授/学習院大学経済学部経営学科教授。経営学部部長。専門はマーケティング。特に消費行動論、ブランド戦略。