【マーケターインタビュー】日本メディアが積極的に報じないSDGsの現状と中小企業の取り組み方(2019年11月号)

マーケターインタビュー
2019 Vol.30
【マーケターインタビュー】日本メディアが積極的に報じないSDGsの現状と中小企業の取り組み方(2019年11月号)
このところカラフルな円がモチーフのピンバッジを着けたビジネスパーソンをよく見かける。

2030年までの17の達成目標を各色に託したSDGsのバッジだ※。達成期限を10年後に控えたSDGsについて、中小企業の取り組みはどうあるべきか。

積極的にSDGsを事業に取り入れている井関産業株式会社の安並潤 代表取締役社長をお招きしてセミナーを開催した。今回はそのレポートをお届けする。
井関産業株式会社
代表取締役社長

安並潤 (やすなみ じゅん)

容器包装資材の販売、セールスプロモーション事業、並びに日用雑貨自社ブランドの展開を行う中で21世紀の真のテーマ、サスティナビリティを経営のベースとし、経営革新とイノベーションに取り組む。北欧スウェーデンを中心に、サスティナブルな仕組み、モデル、商品開発、行政、教育機関、都市計画をベンチマークし、自社の経営に取り入れる。英国サスティナビリティ(CSR)プラクティショナーとしてサスティナビリティの普及に努める。

https://www.isekigroup.co.jp/

国連加盟193カ国が採用した誰一人取り残さない開発目標

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称で、2015年9月に国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき目標です。サインした全ての国が取り組まなければならない17の大きな目標と、169のターゲットがあります。もちろん日本も取り組む責任があります。
 私がSDGsで最も大事だと思うのは、「誰一人取り残さない」ということ。70億人を超える人口の中で、自分たちも取り残さないし、その日の食べ物にありつけないような子たちも取り残さないというのは、非常にチャレンジで積極的ですよね。

日本メディアが報じない現状危機的状況を知らない日本人

「地球資源超過日(Earth Overshoot Day)という、地球が1年間で再生できる自然資源を使用しきった日にちという指標があります。昨年は8月1日、今年は7月29日でした。私たちは地球が再生するスピードより早く資源を使っているのです。現在は地球1.75個分の資源を使っているといわれています。
 地球温暖化も進んでいます。地球の温度が1度上がると海面が最大77センチメートル上昇するといわれていますが、今年の1月24日、オーストラリアで最高気温49度を記録しました。1月31日には北米で体感マイナス4度とBBCニュースが報じました。これを自然の環境と捉えてもよいのでしょか。
 これらを踏まえ、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、2020年以降は石炭火力発電所を禁止すべきで、さもなければ大災害に直面するとし、各国政府に対し化石燃料に多する補助金をやめて再生可能エネルギーや電気自動車にエネルギーシフトするよう呼びかけました。
 また、畜産業は家畜のげっぷで排出されるメタンガスは二酸化炭素より温暖化効果が高く、問題となっています。ヨーロッパは肉の消費量が十数パーセント減り、ビーガンやベジタリアンも増えています。

海洋汚染とプラスチック問題 遅れる日本の取り組み

  現在、海に漂っているプラスチックごみは合計1億5000万トン、水深1万1000メートルのマリアナ海溝にもプラスチックごみがたまっていることが明らかになりました。そこに年間800万トン(ジャンボジェット機5万機相当)のプラスチックごみが海に流出し、プラスチックベルト(太平洋ごみベルト)が形成されています。漁網に絡まったウミガメが死んでしまうなど、生物界への影響も深刻です。2050年には海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回るという予測もあります。
 しかし、この問題に対する「海洋プラスチック憲章」に日本は法整備の遅れと 業界の配慮を理由に署名しませんでした。果たして2030年までにSDGsの目標を達成できるのでしょうか。
 VOLVOの巨大な工場はすべて再生可能エネルギーで回っていて、社員食堂はオーガニックレストラン、ゼロ・ウェイスト(ごみを出さない)に取り組み、1週間で出たごみの量を数字で分かるようにしています。また、LGBTへの配慮もなされていて、多様性を受け入れる姿勢もた強力なイノベーションの原点のように思います。
 持続可能な都市計画も有名で、マルメのウェスタンハーバーやストックホルムのハマビーという町は、工業地帯を美しい自然と共生した地域へと再生させました。ハマビーは川にビーバーが住み、下水は再生されてビール作りに使われています。
 スウェーデンはスタジオジブリの『魔女の宅急便』の舞台で、主題歌『やさしさに包まれたなら』には『目にうつる全てのことはメッセージ』という歌詞があります。実際、スウェーデンを歩くとあらゆることに意味があり、メッセージだと感じます。

スウェーデン・マルメの街を走るバス。車体上部に「Biogas(バイオガス)」の記載がある

スウェーデンの街では自動車の代わりにシェア電動キックボードや路面電車が主流になってる

日本企業の取り組み トップが本気で発信し続ける

 私は昨年のCOP24という国際会議でスピーチしたグレタさんという15歳の女の子の動画に突き動かされ、SDGsに真剣に関わるようになりました。そして先日訪れたアフリカのガガ村で、子どもたちが学校に行かず水くみをしている現実に触れ、さらに自分ごととして考えるようになりました。
 いまは「トリプルボトムライン」という経済と環境と社会の3側面から企業を評価する枠組みに基づき、自社の事業構造や経営計画を再構築しました。最初は社内でも取り組む意義がうまく伝わりませんでしたが、新しいビジネスモデルのテーマはこれじゃないかと発信し続けました。そして本社を再生可能エネルギーに切り替え、勉強会を始めたり、社内アワードを作ったりした結果、いまでは社員たちが自発的に取り組んでいれています。
 よくSDGsは儲かるのかと言われますが、儲かるからやるのではなく、未来への責任として取り組む姿勢があって、その結果として1200兆円といわれる市場でシェアを獲ることが理想的だと考えています。SDGsトップがどれだけ本気で取り組むかが鍵だと思います。

VOLVOの本社にはLGBTの旗が掲げられている

インタビュー後記

(右)安並 潤さん
(左)インタビュアー日野佳恵子

時間を作っては先進事例を見に海外に足を運んでおられる安並社長。「日本の中小企業経営者ができるSDGsとは」を模索し、行動し、発信されています。
 環境問題はすでに地球規模の緊急課題。お話を聞きながら、日本は間違いなく遅れていることを感じられずにはいられませんでした。SDGsを周囲で話題にし認知を広げ、関心を持ってもらうことも第一歩。私たちも積極的に取り組んでいきたいと思います。
Interviewer
株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役
日野 佳恵子

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