【マーケターインタビュー】「DIY」+「女子」+「体験」で新業態を創る。女性のあしたを見据えたカインズの挑戦(2019年2月号)

マーケターインタビュー
2019 Vol.21
【マーケターインタビュー】「DIY」+「女子」+「体験」で新業態を創る。女性のあしたを見据えたカインズの挑戦(2019年2月号)
市場規模が10年以上にわたって横ばいとなっているホームセンター業界。

その中で道を切り拓くこれからの店舗や商品開発、業態のあり方について、業界のリーディングカンパニーであるカインズのインテリア・ファニシング事業部長 吉井純人氏に話を聞いた。
株式会社カインズ 役員待遇 商品本部 ライフスタイル事業部長
吉井 純人 (よしい すみと)

1995年株式会社カインズ入社。資材事業部・DIY 事業部のバイヤーを経て、資材部、DIY部、ファーム・ ガーデン部、インテリア・ファニシング部の部長を歴任。2018年、ライフスタイル事業部役員待遇事業本部長に就任。

https://www.cainz.co.jp/
 ホームセンターの市場規模は10年以上にわたって横ばい、しかしその内訳には変化が見える。比率が高まっているのがDIYだ。最近ではDIY女子という言葉が定着し、女性のDIY関連消費も増えている。
 近年、小売業でも単なる商品の販売だけではなく、「体験」に主眼を置いたサービスが注目を集めている。中でもここ数年のカインズの取り組みは業界内外から注目されている。

一人一人のレベルに合わせた ものづくり体験ができる工房

①インテリア洗濯ハンガー
 まずは、店舗に併設されたCAINZ工房。ここでは部材のカットや加工、組み立てができる工作室のほか、ペイントルーム、溶接ルーム、レーザー加工機や3Dプリンターが使えるデジタル工房、金属加工ルームと、DIYの枠を大きく広げる本格的な作業ができる。
 工作室では、店舗で購入した部材を機材で加工できる魅力に加え、ワークショップを開催して「買う」「学ぶ」「作る」をワンセットで提供している。ワークショップは女性の参加者が増えており、カインズ側の担当者もDIY経験の少ない女性社員を起用、消費者目線に沿った商品開発やサービスを提供している。
 カインズでは「CAINZ DIY STYLE」という大きな枠組みの中で、売場+工房+ワークショップ(サービス)+人のつながりという4軸を組み合わせている。特に人のつながりの点では、SNSによるサークル的なコミュニ ティーも生まれている。ハッシュタグ「#カインズdiy」でインスタグラムに投稿すると、カインズでDIYに挑戦した女性客たちの作品が見られるのもその一例だ。どの投稿からもワークショップの楽しさやDIYの楽しさが伝わってきて、DIYの実体験だけでなく、自分の作品をSNSでシェアすることも新たな楽しみにしている様子がうかがえる。

自分らしさを表現する プライベートブランド商品

②パタランミニ
 続いて商品開発。カインズは2代目社長・土屋裕雅氏の方針によりプライベートブランド(以下PB)の開発に力を入れ始めた。価格競争では今後の差別化が難しいと判断した土屋社長の本気度は、SPA(製造小売)企業への移行のため2012年に本部ビルを新設したほど。正社員やパートを問わず全社員が同じシステムを使って提案できる体制を整え、現場の声を的確に反映させた商品開発には、カインズらしさが存分に発揮されている。大ヒットしているDIYツールシリーズ「Kumimoku」の場合は「お客様が自分らしくつくる」をコンセプトにしており、お客が手を入れる部分、自分らしさを表現できる部分を残している。先のワークショップの内容にもその視点が反映されており、組み立て後の塗装などでオリジナリティーを加えることで、お客はより高い満足感を味わうことができる。
 カインズのPB商品は、思わず目を引く高いデザイン性が評価され、多くのグッドデザイン賞を獲得している。2018年度には6つの商品が受賞しており、「インテリア洗濯ハンガー」は家事負担の大きい女性の声を随所に生かし、売れ行きも好調(写真①)。同じくグッドデザイン賞の畳める室内物干し台「パタラン」も消費者の声を取り入れサイズを小さくした結果、売上が上がってきている(写真②)。どちらも「家具のような洗濯用品」というコンセプトで開発されたものだ。
③土鍋風軽量アルミ鍋
 また、カインズは現在、「機能」×「デザイン」の視点でPB開発を進めている。商品群を超え、より消費者のライフスタイルに合わせたラインアップを提案している。この冬のヒット商品である「土鍋風軽量アルミ鍋」は、重そうな見た目とは裏腹に約1.2kgと通常の土鍋の半分以下の軽さ。コンセプトとカラーが同じ「軽量フライパン」や、キッチン家電の「Vinte」シリーズも、デザイン性を取り入れつつ女性の毎日を楽に、そして楽しくしてくれる(写真③④)。
④キッチン家電「Vinte」シリーズ

都市部のショッピングモールに出店! 女性をターゲットにした新業態

 そして大きな話題になっているのが、新業態の「Style Factory」だ。
 Style Factoryのターゲットは30~40代の女性。既存の店舗と異なり、ショッピングモール内のテナントとして出店する。大型店の10分の1ほどの規模で、品ぞろえはPB商品が3分の1を占める。雑貨やインテリアを中心に4つのゾーンで「自分らしさの実現」を提案する。もちろん工房もあり、購入してその場で加工することも可能だ。
 現在の4つのゾーンは「HOME DESIGN」 「RAKUKAJI(楽カジ)」「WELLNESS」「DIY STYLE」に分かれ、木材を多用した店舗デザインと明るくも落ち着いた照明で、おしゃれな雰囲気で自分らしいDIYをイメージできる。ゾーンのテーマは、店舗や時期によって変更していきたい考えだ。
 現在は名古屋のテラッセ納屋橋とららぽーと名古屋みなとアクルスに2店舗出店しているが、Style Factoryでもワークショップには力を入れており、両店とも毎日DIYに関する講座やイベントが開催されている。
⑤Style Factory(ららぽーと名古屋みなとアクルス店)

現場とお客様の声を取り入れ 新しいスタイルの創造へ

 これからの小売業、開発担当者は、カインズの取り組みから何を学ぶべきか。カインズは論語の一節「下学上達」を重視し、積極的にコストをかけて常に現場の声、お客様の声を取り入れることで、時流に乗っている。それゆえSPA企業への本格的な移行にも力を入れ、段階を経て、Style Factoryの挑戦も始まった。現場の声、お客様の声を具体的に取り入れつつ、新しいスタイルを創造し提案し続けることが、これからの重要なポイントになるだろう。新設された本部ビルの入り口の石に刻まれた「創るをつくる」の言葉が、これからもカインズの未来を示し続ける。

インタビュー後記

 インタビューに伺ったのは埼玉・本庄早稲田のカインズ本社。入り口を入ると広々とした空間に「グッドデサイン賞」などのフラグが下がり、カインズの開発した商品が多数受賞していることがわかります。ホームセンターといえば工具などが中心で、男性客向けの店というイメージですが、カインズは業界の中で最も女性客に支持されている企業です。今回取材に伺った理由は、新業態「 Style Factory」に注目したためです。30代~40代の女性をターゲットにした店で、ショッピングモール内にテナントとして出店。通行する女性客がふらりと入る場所で、どんな風に女性客の購買意欲を上げて売上につなげていくのか。私たちとしても大変興味深いので、ぜひ情報交換をしながらウォッチさせてください。
Interviewer
株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役
日野 佳恵子

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