【マーケターインタビュー】AIは女性を輝かせる最強の道具。内なる“マニア力” を育てマーケットを豊かに(2019年3月号)

マーケターインタビュー
2019 Vol.22
【マーケターインタビュー】AIは女性を輝かせる最強の道具。内なる“マニア力” を育てマーケットを豊かに(2019年3月号)
仮想通貨、フィンテック、そしてAI(人工知能)… コンピュータが人類の仕事を奪い、そして人間を超える日がやってくるという未来予測の中、AIがもたらすものは何か。

女性たちの生活がどう変わるのか。女性たちの仕事やマーケット環境はどう変化してゆくのか。

人工知能や脳科学の研究者で感性分析の第一人者・黒川氏に、AIがもたらすこれからの未来について伺った。
株式会社 感性リサーチ
代表取締役
黒川伊保子(くろかわ いほこ)

奈良女子大学理学部物理学科卒。富士通ソーシアルサイエンスラボラトリで人工知能の研究に従事した後、世界初の語感分析法を開発。マーケティング分野に新境地を拓く感性分析の第一人者となる。脳科学と独自のマーケティングをもとに人間の思考や行動を綴ったベストセラー多数。著書に『恋愛脳』『アンドロイドレディのキスは甘いのか』『ヒトは7年で脱皮する 近未来を予測する脳科学』など多数。

http://www.kansei-research.com/
私は36年前から人工知能の開発に携わってきました。音声認識、自然言語解析、ディープラーニング、テキストマイニングなど、一通りのAI開発を経験。1991年には全国の原子力発電所で、ビジネススキームでは「世界初」と言われた日本語対話型コンピューターを稼働させました。

「女性に気持ちいいことば」と「男性に気持ちいいことば」の違いに着目

自然言語解析の専門家として、1980年代の終わりごろから、人とAIの対話を研究しています。その研究の途上で「気持ちいいと思う対話のスタイルが男女で大きく違う」ことに気づきました。この世には2種類の会話があり、男女は感情が伴う会話において、とっさに異なる会話スタイルを選択することを発見。女性は共感を期待しており、男性は問題解決をしてやりたいと思っている。例えば「腰が痛い」と訴えた妻には「そりゃつらいよね」と共感して、家事を手伝ってあげればいいのに、夫は「医者に行ったのか」なんて畳み掛ける。近未来のAIは、この2つの対話スタイルをハイブリッドで搭載し、相手の話法に合わせて切り分けるべきだと思っています。

1990年代の終わり、私が発見した「男女のミゾの正体」をAIの中に閉じ込めておくのは惜しいと思いました。私の研究成果がAIに搭載されるのはずっと先のことだったからです。まずは生身の男女に幸せな対話を実現してもらいたい。そう考えて、2003年、開発現場を飛び出し、AI研究の知見をマーケティングや人材開発に使っていただく会社(株式会社感性リサーチ)を立ち上げ現在に至っています。
AIとヒトのあり方について論じた著書「アンドロイドレディのキスは甘いのか」1296円(税込・河出書房新社)

「察し、思う、寄り添う」才能に溢れた女性たちが活躍する場はますます拡がる

高速通信とAIの発達によって、危険で過酷な現場に人が出向くことが減ります。工事現場の建機の運転や、工場の管理などの遠隔操作が可能になって、オペレーターは快適なオフィスで運転員を務められます。そうなれば、力がなくても、過酷な環境に耐えられなくても、運転センスが生かせるようになり、女性の活躍の場はかえって広がることが予想されます。

AIは、客観的・合理的・定型の作業が得意です。男性脳型エリートが得意としてきた仕事は、案外あっさり奪われます。私情を排し、過去事例や数字に従順な法律家や金融マンはその筆頭。一方で「察し、思う、寄り添う」仕事はAIには代替できず、その才能に伴うアウトプットが価値を上げます。そもそもこれは女性脳の才能。ゆえに女性たちは活躍の場を広げてゆくと思います。また、男性が開発する感性AIは、女性脳には使いにくいはず。「女性たちによる、女性たちのためのAI開発」が急務といえます。開発を男性だけに任せてはおけません。
書籍「ヒトは7年で脱皮する近未来を予測する脳科学」810円(税込・朝日新聞出版)

人工知能は高性能な道具「AIにさせないこと」を決め生活を豊かに

日々の暮らしへの上手な取り入れ方は、かつて私たちの母の世代が電子レンジを暮らしに取り入れたときと重なります。「何を電子レンジにさせるか」よりも「何をさせないか」に料理のセンスが見えました。AIも同じで、任せれば便利ですが、あえてAIに任せないというセンスが重要。暮らしや家族を愛しむためには、自ら判断し、手を下すことも大事でしょう。

これからの時代は「好奇心」が武器 何かのマニアやフェチになる力が不可欠

前述の通り、十分にモデル化された知的エリートの仕事ほどAIに奪われます。誰もが納得する答えを誰よりも早く出してくることは、AIが最も得意とするところです。むしろこれからは、エリートではなくマニアを育てる時代。例えばスポーツ記事を書くAIに「いいスポーツ記事とは何か」を教えるAIプロデューサーが求められます。必要とされる資質は、スポーツ記事が好きで、いい見出しには涙するくらいのマニア力。テレビ番組『マツコの知らない世界』に登場するマニアたちがお手本です。何かを徹底して好きになれる好奇心と、それを類型化し展開する戦略力ですね。子どもには「何かを徹底して好きになること」を許し、マニア力を育ててあげることが21世紀の子育ての肝だと思います。
ナイス株式会社の住宅「デュークスパフェ」。黒川氏が監修を手がけ、共働き家族の暮らしやすさを追求したハウスを2018年11月に発表した

人工知能の時代は人間性の時代 ヒトの心に根ざした「感性」を追究する

これから、AIは、人に寄り添う時代に入ります。AIの開発者は、人の感性のありようをもっと知らなければなりません。例えば介護ロボットでは、おじいちゃんとおばあちゃんで所作さえ変えてあげる必要があります。男女それぞれの脳が認知しやすい所作のタイプが違うからです。女性の感性を研究し尽くさずに女性のビジュアルや声を持つAIを作ってしまうと、女性がこのAIを使ったときに違和感が生じます。さらに言うと、母語が違えば感性も違うので、英語圏の人の「気持ちいい」が、日本人の「気持ちいい」と必ずしも一緒ではありません。

現在のAI研究と開発においては、「感性」の研究が圧倒的に足りないと思います。感性は直感と経験によって生み出される信号であり、快・不快、好き・嫌いという判定にかかわる主観的センスです。AIを企業の顧客対応などに使う場合、安易に取り入れず、しっかりと検討しなければならないと思います。

特に、ビッグデータからの気づきをマーケティングに取り入れるためのAI活用は、数値処理に注意が必要です。女心を測るのに統計データは意味がありません。しかし、男性開発者たちはそれをしたがる傾向にありますね。それでは、女性の期待に応えられない男性と同じ答えをAIが出すことになってしまいます。

これから10年で、AIは劇的にビジネススキームを変えるでしょう。そんな時代には、好奇心だけが人生の羅針盤。「自分」をしっかり生きている人こそが、AIの時代の覇者になるのだと思います。

インタビュー後記

インタビューは黒川伊保子さんのオフィスに伺った。次々とベストセラーを出し続け、出版された本が机に並んでいた。夫婦、男女、ビジネス、AIと「脳」にかけては幅広い方面の本を出していて、とにかくどれも興味深い。この日もあと2本の原稿の締め切りが数日後に迫っているのだと言われていた。

実は彼女とは古い友人で久しぶりの再会だったが、以前からずっと、なんて魅力的な話し方と言葉を使う女性なのだろう、と勝手に憧れを持ち続けている。

きっと「脳が心地よくなる」表現、響き、音の高さ、単語、言葉の使い方、そしてスピードを知っている人だからなのだろう。人工知能の専門家と聞けばどんな難しい女性なのだろうと思われそうだが、彼女は正直まったく違う。品がありセクシーで「脳を包み込む」。

AIが傍らにいる暮らしはこんな風にやさしいのか、と感じることのできる時間になった。
Interviewer
株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役
日野 佳恵子

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