【マーケターインタビュー】1分半の動画広告で1000億円企業へ。D2Cが持つ可能性と未来(2019年10月号)

マーケターインタビュー
2019 Vol.29
【マーケターインタビュー】1分半の動画広告で1000億円企業へ。D2Cが持つ可能性と未来(2019年10月号)
数年前からeコマースにおいてD2Cという言葉を目にするようになってきた。

消費者の素直な疑問がそのままビジネスになって成長し、1000億円きぼで買収される記事が出てくるなど、その動向は実に興味深い。

eコマース業界紙での記者を経て、現在はニューヨークと日本に拠点を持ち、アメリカのリアルなeコマースの情報を発信しているライターの公文紫都さんにお話しを伺った。
フリーライター
公文紫都(くもん しづ)

東京都生まれ。青山学院大学文学部卒業後、IT関連企業、通販・Eコマース業界専門誌記者を経て、2012年6月に独立。現在ニューヨークと日本とで2拠点生活を送りながら、国内外のITスタートアップ情報の発信や、海外イベントの取材・執筆等を行っている。著者に「20代からの独立論(前編)」「20代からの独立論(後編)」(共にインプレスR&D)。noteで米国のD2Cやサブスクリプションサービスに関する情報を発信中。

https://note.mu/nymillennials

メーカーが直接消費者へ販売 eコマースに台頭するD2Cとは

D2CとはDirect to Consumerのことで、デジタルを使いメーカーが直接消費者に販売するビジネスモデルです。卸業や店舗を持っているところもありますが、基本はeコマースサイトを作るのが起点ですね。日本ではD2CやDtoCと書かれることがおおいですが、アメリカではDTCという表記も目立ちます。
アマゾンなどのモールに出店するとお客がたくさんいるメリットはありますが、一方で自分たちが得られる消費者データには制限があります。しかしD2Cモデルは消費者から直接もらうフィードバッグを商品開発に活かせたり効果的にPDCAを回せたりするので自分たちでハンドリングできるのが面白いところで、また強みでもあります。

説得力のある破壊者 SNSや動画で共感を得るD2C

 D2Cスタートアップの多くは既存のサービスや商品に課題を見つけ、それを自分たちのアイデアや最新テクノロジーを利用し説得力を持って市場をディスラプト(破壊)していくため、ディスラプターと呼ばれることもあります。D2Cサービスのお客はミレニアル世代が中心ですが、彼らはスマホで欲しい情報を能動的に取りに行きます。価格や社会への貢献度合いを含め信頼できるブランドを自分で見極めたいのです。そこをD2CスタートアップはSNSや動画でうまく説明し、お客の共感と納得を獲得します。
 また、大企業の弱みは直接お客とつながりにくいところですが、D2Cのスタートアップを買収することで、お客の生の声を手に入れたり、スタートアップならではのノウハウを取り込んだりすることができます。
 ダラーシェーブクラブ(Dollar Shave Club)というひげ剃りのD2Cスタートアップは制作費わずか50万円、1分半の動画がバズって一躍有名になりました。既存大手への疑問をコミカルに代弁して消費者の共感を集め、定期的に替刃が届くサブスクリプションモデルの利便性と相まって成功し、ユニリーバ(Unilever)に約1000億で買収され一気にユニコーン企業となりました。同じく、もう1つのひげ剃りのD2CスタートアップのHarry's(ハリーズ)も、Schickで知られるエッジウェルパーソナルケア(Edgewell Personal Care)に約1500億円で買収されています。
 D2Cスタートアップは大企業にとってもますます無視できない存在になってきています。

D2Cの商品が持つストーリー 創業者の姿勢をそのまま商品化

D2Cスタートアップには創業者の強い思いが起点になっているブランドもあります。ドランクエレファント(Drunk Elephant)というスキンケアブランドは、テキサスに拠点を置く1人の主婦が作りました。子どもの学費の足しになればと化粧品販売を始めた彼女は、成分の勉強をしていくうちに、市販品のなかには肌に有害な成分が含まれていることに驚きました。そこから「この6つの原材料を使わない」と決めて化粧品を開発したところ、母親たちの強い共感を集めて成長を遂げ、今では一流化粧品専門店セフォラでベストセラー品として扱われるまでになっています。SNSでもお客が自発的に情報発信したり、ファンを公言するセレブが自ら愛用品を紹介したりすることも多く、それらが口コミになり拡がっています。

テック市場でも活発なD2C 大企業とスタートアップの協業も

 アメリカやフランスをはじめとする海外のテック系カンファレンスでは、大企業が参加し、スタートアップとの協業に積極的な姿勢を示し始めています。スタートアップ側も大企業との提携は信用や資金の面でも魅力的なので、これからも両者が手を組んで加速度的に成長していくといいですね。
 ラスベガスで毎年1月に開催されるCESという電子機器の見本市に昨年から参加していますが、ベビーテック(妊娠、出産、育児が抱える課題を解決するテクノロジー)の分野ではブラジャーのカップに入れて仕事中でも目立たず音もなく搾乳できるデバイスや、尿をかけた排卵検査キットをスマホのカメラに取り付けた専用デバイスの上に置くと、カメラとライトがキットの色の変化を測定し、排卵のタイミングを99%の精度で教えてくれるものが出てきています。
 スリープテックと呼ばれる睡眠の課題解決をめざすテクノロジー分野も注目を集めていますが、なかでもアメリカ発のキャスパー(Casper)というマットレス販売のD2Cスタートアップは、良質な製品を手頃な価格で販売するだけでなく、100日間トライアルと10年保証を付けたことが受け、ユニコーン企業になりました。しかし、特筆すべきはウェラブルデバイスやアプリを利用するなどして睡眠情報の収集に熱心なユーザーが積極的にキャスパーにフィードバッグを提供し、それが商品改善サイクルに生かされていることです。有益な消費者のデータをいかに収集できるかは重要なので、キャスパーの事例は大いに参考になると思います。

ドランクエレファントのポップアップショップ店内

グロッシエーに見る店舗の役割と日本のD2Cの課題

 これからの実店舗は、世界観を打ち出すことが重要だと思います。グロッシエー(Glossier)というコスメティックブランドは、Teen VOGUEでインターンをしていた女性が立ち上げたブログをきっかけに始まり、評価額12億ドルにまで成長したD2Cの代名詞的企業です。ブランドが持つ可愛らしい世界観を体現したニューヨークのグロッシエーの店舗では、日頃SNS等で熱心にチェックしていたと思われる中学生くらいの女の子が今にも泣き出しそうな顔をし、やっとお店に来れたと震える手で商品を手に取り感動していました。期間限定でオープンしていた隣接する同ブランドの香水の店舗は、店内すべてが真っ赤、妖艶な世界観をこれでもかと打ち出していました。日本でも著名人がオリジナルコスメブランドを発表し大人気になるなど、有力なD2Cブランドが出始めてきているので、さらなる盛り上がりを期待しています。
 日本のD2C企業には、アメリカの事例を参考にしながら日本ならではの課題と向き合い、また信頼と共感を得て、物怖じせず、新しいことにチャレンジしていってほしいと思います。

グロッシエー店内で販売されている商品と、来店客が商品を試している様子

インタビュー後記

Interviewer
株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役
日野 佳恵子
ニューヨークと日本を行き来する公文さんのお話は本当に刺激的でした。D2Cという言葉は知っていましたが、「結局はネットの企業が小売に進出。従来の小売の会社のECと同じでは」と思っていました。しかし公文さんの「既存のサービスや商品の課題を見つけ、それを自分たちのアイデアや最新テクノロジーを利用し説得力をもって市場にディスラプト(破壊)していく」という部分は、なるほど、と深く納得しました。
 つまりD2Cは、スマホを持った世代のミレニアルが中心。新しい世代に商流変革していることを強く実感しました。

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