【特集】新規事業はニッチな市場に活路を見いだす。オタク社員の声で便利グッズ開発(2019年8月号)
女性マーケティング特集
2019 Vol.27

INDEX
新・オタク大衆化商品
今や「オタク」は、アニメや漫画のファンに限ったものではなく、何らかに熱中していれば「オタク」とみなされる。そのグループは共通の興味関心で細分化され、「同じ興味関心に属す=同属」と表現してみたい。
2019年4月、「ライブなどのチケットやグッズの購入費は年間8万円」とするぴあ総研の調査結果が公表されると、ネット上では「8万円で済むわけがない」という意見が飛び交った。コアなファン、つまりオタクとなると、趣味のためには惜しみなく消費する様子がうかがえる。
今回は狭義のオタクに限らず、文房具、フィットネスなどにも幅を広げ、同属で熱中する女性の消費行動とビジネスのポイントを追った。
2019年4月、「ライブなどのチケットやグッズの購入費は年間8万円」とするぴあ総研の調査結果が公表されると、ネット上では「8万円で済むわけがない」という意見が飛び交った。コアなファン、つまりオタクとなると、趣味のためには惜しみなく消費する様子がうかがえる。
今回は狭義のオタクに限らず、文房具、フィットネスなどにも幅を広げ、同属で熱中する女性の消費行動とビジネスのポイントを追った。
同属女子が共感する3つのポイント
①同属だけで集まり、好きや目的を共有する空間
②企業担当者も同属。当事者のニーズをくみ取る
③企業がSNSなどで同属歓迎の熱意を発信
②企業担当者も同属。当事者のニーズをくみ取る
③企業がSNSなどで同属歓迎の熱意を発信
DATA
【レポチケ】新規事業はニッチな市場に活路を見いだす。オタク社員の声で便利グッズ開発
入社1年目の女子社員が企画。舞台の記録をまとめるノート
矢野経済研究所の調査によれば、2017年度のアニメ市場規模は2680億円、アイドル市場規模は2150億円。アイドルオタク1人当たりの年間消費金額は10万円を超えるとされる。こうしたオタク市場に注目して商品開発を行っている企業が株式会社ハゴロモだ。
アーティストカレンダーやキャラクターグッズの企画・制作・販売等で業績を伸ばしてきた同社が2018年秋に発売した「レポチケ」という商品が、舞台やアイドル、アニメのファンの間でヒットしている。
レポチケとは、コンサートなどのチケットの保管と思い出のメモを1冊でかなえるノート。開くと片面がチケットやイベントの記念品(銀テープや写真など)を入れられるビニールポケットになっている。もう片面は白地のフリースペースで、イベントの感想やレポートを自由に記入できる。
リングは10色を展開する。アイドルやアニメ作品のイメージカラー、応援している「推し」のカラーで選べるようにするためだ。発売後、要望の多かった2色(オレンジ、紫)も限定色として追加した。
アーティストカレンダーやキャラクターグッズの企画・制作・販売等で業績を伸ばしてきた同社が2018年秋に発売した「レポチケ」という商品が、舞台やアイドル、アニメのファンの間でヒットしている。
レポチケとは、コンサートなどのチケットの保管と思い出のメモを1冊でかなえるノート。開くと片面がチケットやイベントの記念品(銀テープや写真など)を入れられるビニールポケットになっている。もう片面は白地のフリースペースで、イベントの感想やレポートを自由に記入できる。
リングは10色を展開する。アイドルやアニメ作品のイメージカラー、応援している「推し」のカラーで選べるようにするためだ。発売後、要望の多かった2色(オレンジ、紫)も限定色として追加した。
レポチケを発売した2018年、ハゴロモ社内では新商品開発プロジェクトを実施し、いいアイデアの商品を30点ほどリリースした。その中の一つがレポチケだった。
企画したのは当時入社1年目の女子社員Yさん。ジャニーズとハロー!プロジェクト、K-POPが好きで、日頃からチケットと感想を書くノートを一つにしたいと思っていたという。「公演であったことや舞台の見え方を記録できればと考えました」(Yさん)
企画したのは当時入社1年目の女子社員Yさん。ジャニーズとハロー!プロジェクト、K-POPが好きで、日頃からチケットと感想を書くノートを一つにしたいと思っていたという。「公演であったことや舞台の見え方を記録できればと考えました」(Yさん)
Twitterの反応や販売実績など、具体的な数字で販路を開拓
発売から約半年で累計2万冊が売れるヒット商品となったレポチケ。とはいえ、最初から大ヒットしたわけではない。
火が付くきっかけは、Twitterに発売情報を投稿したことだった。ありそうでなかった商品のアイデアに「自分もチケットをきれいに保存したいし、感想も一緒に残したい」というオタクの共感が重なり、約8000件のリツイートとまたたく間に拡散された。
「バズってから一気に在庫がなくなり、これはいける!と確信しました」と話すのは、企画した女子社員の上司にあたるクリエイティブ部部門マネージャーの石井昭如さん。それまでは自分自身が男性かつオタクではないため、レポチケのこだわりがピンと来ていなかったという。
また、同じように営業先の担当者が男性だと商品の特性が響きにくく、販路開拓に苦戦したという。「なぜチケットを捨てずに取っておくのかがわからない」と言われたこともあった。だが、そんなときは実績の数字がカギとなり、リツイートやいいねの数、販売数などの数字を伝えると納得してもらえるケースが多かった。
一方、客層にオタクが多かったり、担当者自身がサブカルチャーと親和性が高かったりする店舗は共感を得やすい。女子社員が作成した使い方のサンプルを見せるだけで商品の特長を理解し、仕入れてくれた。
「私は絶対に需要はあると思っていました」と語るYさん。オタクならではの視点で、オタクが本当に欲しいものを作ることが大切だと指摘する。「デジタルチケットも広まりつつあり、その方が便利と思うかもしれませんが、オタクにとっては紙で残ることが大事。デジタルチケット賛成派のオタクは少ないと思います」。今後もオタクにしかわからないニーズをくみ取って商品開発をしたいと考えている。
火が付くきっかけは、Twitterに発売情報を投稿したことだった。ありそうでなかった商品のアイデアに「自分もチケットをきれいに保存したいし、感想も一緒に残したい」というオタクの共感が重なり、約8000件のリツイートとまたたく間に拡散された。
「バズってから一気に在庫がなくなり、これはいける!と確信しました」と話すのは、企画した女子社員の上司にあたるクリエイティブ部部門マネージャーの石井昭如さん。それまでは自分自身が男性かつオタクではないため、レポチケのこだわりがピンと来ていなかったという。
また、同じように営業先の担当者が男性だと商品の特性が響きにくく、販路開拓に苦戦したという。「なぜチケットを捨てずに取っておくのかがわからない」と言われたこともあった。だが、そんなときは実績の数字がカギとなり、リツイートやいいねの数、販売数などの数字を伝えると納得してもらえるケースが多かった。
一方、客層にオタクが多かったり、担当者自身がサブカルチャーと親和性が高かったりする店舗は共感を得やすい。女子社員が作成した使い方のサンプルを見せるだけで商品の特長を理解し、仕入れてくれた。
「私は絶対に需要はあると思っていました」と語るYさん。オタクならではの視点で、オタクが本当に欲しいものを作ることが大切だと指摘する。「デジタルチケットも広まりつつあり、その方が便利と思うかもしれませんが、オタクにとっては紙で残ることが大事。デジタルチケット賛成派のオタクは少ないと思います」。今後もオタクにしかわからないニーズをくみ取って商品開発をしたいと考えている。
「オタクグッズのハゴロモ」へ社内から社外へオタク認知向上
レポチケのヒットを受け、オタクに向けた便利グッズを開発する部署をつくることになったハゴロモ。Yさん、石井さんら3人が所属する「オタク生活向上委員会」がクリエイティブ部の中に2019年3月に発足した。
また、外部(営業先)に理解を求めることも重要だが、オタク向け商品の開発にはまず社内のオタクではない上司が理解する必要もある。そこで石井さんは、Yさんにコンサートの感想をヒアリングするだけでなく、一緒にコンサート会場の物販やグッズショップへ足を運ぶようにしているという。
「コンサート会場で女の子たちがみんな、買ったグッズの写真を会場を背景にして撮るんですね。それに、グッズショップでは大量に買うのでレシートがとにかく長い。驚きますが、理解が深まります。そして上司としては、Yのような熱量のある意見をくみ取り、予算管理などビジネスのかじ取りをしながら商品開発に取り組んでいます」(石井さん)
同社はオタク向けにレポチケ以外にも複数の商品を発売している。「現場に連れてくファイル」はイベント参加時にイベント会場(=現場)にチケットや身分証明書などをまとめて持っていけるファイル。ジャニーズの舞台で販売されるLL判の写真を入れられるサイズで、折れにくい強度を意識した。
また、外部(営業先)に理解を求めることも重要だが、オタク向け商品の開発にはまず社内のオタクではない上司が理解する必要もある。そこで石井さんは、Yさんにコンサートの感想をヒアリングするだけでなく、一緒にコンサート会場の物販やグッズショップへ足を運ぶようにしているという。
「コンサート会場で女の子たちがみんな、買ったグッズの写真を会場を背景にして撮るんですね。それに、グッズショップでは大量に買うのでレシートがとにかく長い。驚きますが、理解が深まります。そして上司としては、Yのような熱量のある意見をくみ取り、予算管理などビジネスのかじ取りをしながら商品開発に取り組んでいます」(石井さん)
同社はオタク向けにレポチケ以外にも複数の商品を発売している。「現場に連れてくファイル」はイベント参加時にイベント会場(=現場)にチケットや身分証明書などをまとめて持っていけるファイル。ジャニーズの舞台で販売されるLL判の写真を入れられるサイズで、折れにくい強度を意識した。
さらに、「ライブラポシュMII」はライブ時に必要なものをまとめられるバッグ。ペットボトル用のポケットやペンライト用のポケットを備え、ビニールの外ポケットには缶バッジを並べ「痛バ」にもできる。
普通、企業は大きな市場を狙うもの。しかしハゴロモは「社長の理解もあり、ニッチなマーケットにチャレンジできる文化がある」とオタク生活向上委員会の3人は胸を張る。目標を尋ねると、「オタク向けグッズといえばハゴロモといわれるようになりたい」。オタクならではのニーズを反映した商品を、今後も定期的に発売していく予定だ。
Key Point
1 入社1年目の女子社員のアイデアを商品化する社風と体制
2 「ありそうでなかった」「あると便利」をオタク当事者の目線で開発
3 販路開拓は、特長に共感してもらうor数字で納得してもらう
4 上司もオタク文化を勉強。実際に見聞きし、ターゲットの価値観や行動を知る
2 「ありそうでなかった」「あると便利」をオタク当事者の目線で開発
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特集「新・オタク大衆化商品」 取材記事一覧
【Case1】 対象属:アニメ、漫画、アイドル
南国風の部屋と大画面で「推し」を満喫。オタク女子が居続けたくなるホテル
【Case2】 対象属:アニメ、漫画、アイドル
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【Case3】 対象属:文房具
初開催で2万5千人が訪れた文具女子の祭典! 文具愛をメーカーに告白できる場所
【Case4】 対象属:少女漫画
愛読者の社員が興奮のあまり企画!懐かしさに訴える少女漫画誌とのコラボ雑貨
【Case5】 対象属:筋肉
美・筋肉づくりにハマる女子急増! 剣道&暗闇など新ハードトレーニング続々
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取材・文/長濱有莉、水沼遥、大橋博之、上田恭子、佐藤理香