【特集】社会貢献型ビジネスを大学時代に起業。飲食店の予約が給食支援になるアプリ(2019年6月号)

女性マーケティング特集
2019 Vol.25
【特集】社会貢献型ビジネスを大学時代に起業。飲食店の予約が給食支援になるアプリ(2019年6月号)

令和・新世代リーダーの『着眼点』

2019年5月、新元号「令和」の時代が幕を開けた。今月号は、平成を振り返りつつ、令和を担う20代・30代の女性起業家へのインタビューを実施!

これからの時代、経営者はどういった視点でビジネスを仕掛け、消費者はどういった価値観で購買行動をとるのか?新世代をけん引するリーダーたちの着眼点を探る。

社会貢献型ビジネスを大学時代に起業。飲食店の予約が給食支援になるアプリ

「テーブルクロス」 株式会社テーブルクロス 代表取締役 城宝薫さん

2015年立教大学経済学部卒業。投資家などから1億の資金調達を行い、大学3年生時に起業。EY主催WWN2018受賞。EOGSEAグローバルコンテスト日本代表、キャンパスベンチャーグランプリりそな銀行賞受賞。企業・経済団体・大学・NPOなどでの講演多数。

飲食店を予約するだけで途上国に給食が届く

「テーブルクロス」という社会貢献型グルメアプリがある。飲食店を予約すると1人につき180円の広告費が発生し、そのうち30円が給食として発展途上国に届けられるというものだ。
給食を支援した発展途上国の子どもたち
ユーザーは現在40万人で、20~40代が8割以上を占める。男女比は半々。大手グルメアプリと比較すると、「食べログ」PC版は男性が約68%、「ぐるなび」は男性が約54%のため、テーブルクロスは比較的女性ユーザーが多いといえる。

1人につき月平均2.5回程度利用しており、この高いリピート率からは「同じ予約なら、寄付につながるテーブルクロスでの予約を選択する」というユーザーの姿勢がうかがえる。
社会貢献ができるグルメアプリ「テーブルクロス」のアプリ画面。その店舗が今までに何食の給食を支援したかが分かる
社会貢献ができるグルメアプリ「テーブルクロス」のアプリ画面。自分自身が支援した給食数のカウンターも付いている
しかも、掲載する飲食店は完全成果報酬型で固定費がかからず、予約が成立したときのみ上記広告費が発生する。現在、アプリに掲載している飲食店の数は1万店を超え、日本のNPO団体などを通じてインドやフィリピンなど7か国に年間20万食以上の給食を届けている。

「この飲食店は社会貢献の意識があるいいお店」と認識されイメージアップにつながるというメリットもある。
テーブルクロスの仕組み。ファンクラブ「エンジェル倶楽部」の会員は、飲食店とお客さまに向けて働きかける

持続可能な社会貢献と飲食店の課題解決を両立

4月上旬、オフィスを訪ねると、出迎えてお茶を出してくれたのは小学生の女の子。女性スタッフのお子さんで、学校が春休みなので一緒に来たという。そしてオフィスにいるスタッフは7割ほどが外国人で、にぎやかな雰囲気。さらにこの日はテレビ番組が密着取材中。

大勢の人の中でにこやかに笑っている女性が、ユーザー・店舗共に利用したくなるこの画期的なビジネスモデルを立ち上げた城宝薫さんだ。

創業は2014年、大学3年生のときだった。
テーブルクロスの社員(右手前が城宝さん)。多国籍なスタッフや子どものいる光景が日常となっている
多方面から注目を浴びるこのアイデアが生まれたきっかけは、城宝さんの小学生時代にさかのぼる。

当時、家族で訪れたインドネシアで見たストリートチルドレンに衝撃を受けた。「自分と同じ年頃の子どもが、ただ生まれた国が違うだけでその日食べるために働かなければならない。かわいそうというより、自分が幸せなのだと感じました」。

以降、ボランティア活動に熱心に取り組むようになった城宝さん。大学生になって訪れたアメリカで、現地のNPOの人に「単発の寄付やボランティアは一過性の支援にすぎない。継続的な仕組みづくりが大切だ」と言われたことが胸に刺さった。

その後、就職活動を見据えて厳しさで評判の広告会社でアルバイトを経験する中で、飲食店オーナーが高い広告費に苦労していることを知った。ビジネスとして持続可能な途上国への支援と、飲食店の課題解決。それを両立する方策として浮かんだのが、テーブルクロスの仕組みだった。

1口10万円のファンクラブも拡大。キーワードは「共感」

創業から5年、テーブルクロスのビジネスは順調に成長しているが、拡大の鍵となっているのが「共感」だ。

その施策の一つが、2017年に設立したテーブルクロスのファンクラブ「エンジェル倶楽部」。会員になると飲食店やユーザーに対して啓発活動を行う一方、テーブルクロスのプレミアム会員として広告費の一部が還元されるといった特典を受けられる。

自分が会員であることを忘れない金額で、ハードルを高くすることで高い志の人が集まるといった理由から、入会金は1口10万円に設定した。高額な金額にもかかわらず会員数は500人を超え、「日常の行為(飲食店の予約)が社会貢献につながる」というビジネスモデルを広めたいと共感する人の多さを物語っている。

営業部隊の人海戦術で仕掛けるより、共感(ファン化)するユーザーが主体的に活動した方が、コミュニティーは深化しやすい。

城宝さんが最も活動の成果を実感したのは、ケニア政府からの「支援校を増やしてほしい」という要請だった。給食の提供により学校に来る子どもが増え、識字率がアップ。自分で勉強ができるようになり、国力の向上につながるので増やしてほしいとの趣旨だったという。

テーブルクロスに関わる人にも実感してもらうため、年に2回ほど飲食店経営者やユーザーらと現地の学校を訪問するツアーも行っている。参加者からは「途上国が身近に感じられ、自分たちが役に立っていることも実感できた」といった声が寄せられている。
飲食店経営者やユーザーと現地の学校を訪問するツアーの様子。実際に自分たちで給食の炊き出しを行い、子どもたちと触れ合う

会社は優秀な社員に合わせるだけ。付加価値がユーザーに選ばれる

スタッフの幸福度を高めることを重要視しているのもテーブルクロスの特徴だ。よりよい環境づくりのため、子連れ出勤や在宅勤務・時短勤務なども積極的に取り入れている。

そこには城宝さん自身が女性である以上に、「働き方や環境は、優秀な人に会社側が合わせるべき。そして同じ仕事をするなら楽しい方がいい」という考えがあり、幸福度が高いほど仕事のパフォーマンス向上につながる期待もあるという。

「同じことをするなら楽しい方がいい」。

これはテーブルクロスの立ち位置にも通じる。

「負担なく社会貢献ができる」といった付加価値のあるサービスや商品は、ユーザーが「機能が同じなら、こちらがいい」と選び、支持するようになる。

今後は年間4000万食の給食の提供を目指しているテーブルクロス。社会貢献になるという共感を軸に広がる同社の動きに注目だ。

Key Point

1. 1人の飲食店予約が1食の給食となって発展途上国に届けられるグルメアプリ
2. 掲載する飲食店は固定費が無料で、予約成立時のみ180円の広告費が発生する
3. ファンクラブ会員がテーブルクロスの啓発活動を行い、共感が輪を広げる
4. 「同じ内容ならちょっといいことができる商品・サービス」が選ばれる

令和のビジネスのポイント

▶ ぜひ社会にあるべきという必然性
▶ 「誰の何を解決するか」役割が明確
▶ 社会貢献が付加した商品やサービス
▶ スタッフの働きやすさを重要視

令和の消費のポイント

▶ 情報収集はSNSとアプリが必須
▶ 自分の世界観を演出できるかどうか
▶ 質か価格かはシーンで優先が変わる
▶ 好きなものには消費を惜しまない
取材・文/長濱有莉、水沼遥

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