【特集】人種・性別にこだわらない 誰もが当事者となる共通項の追求(2019年12月号)
女性マーケティング特集
2019 Vol.31

INDEX
性別にこだわらない価値観の選択が、特に若い世代、そしてファッション業界や美容業界を中心に広がりを見せている。
背景には「自分らしくありたい」という意欲と、それぞれの個性や選択を肯定し尊重する社会の空気感がある。支持されている商品に共通するのは、「自分らしい自由な選択ができる」という軸。性別や固定概念にこだわらず、悩みや価値観の切り口で開発した商品が、結果的に幅広い層から受け入れられているといえる。
今回は、メッセージや価値観への共感で支持されているアイテムの事例を、ファッション・美容を中心に紹介する。
取材・文/倉本麻衣
背景には「自分らしくありたい」という意欲と、それぞれの個性や選択を肯定し尊重する社会の空気感がある。支持されている商品に共通するのは、「自分らしい自由な選択ができる」という軸。性別や固定概念にこだわらず、悩みや価値観の切り口で開発した商品が、結果的に幅広い層から受け入れられているといえる。
今回は、メッセージや価値観への共感で支持されているアイテムの事例を、ファッション・美容を中心に紹介する。
取材・文/倉本麻衣
性別にとらわれない商品開発3つのポイント
①価値観の多様性を、新しい価値として創造
②選択の自由度を広げたアイテム展開
③性差を超えた共感型メッセージを打ち出す
①価値観の多様性を、新しい価値として創造
②選択の自由度を広げたアイテム展開
③性差を超えた共感型メッセージを打ち出す
リクルートライフスタイルの調査では、若い世代ほど男性も美容に関心を持っている傾向がうかがえる。図2では10~20代の男性のメイクアップ購入率は4割を超える。「自分がそうしたいから選ぶ」という価値観での自由な選択は今後、美容以外のシーンにも波及しそうだ。
リクルートライフスタイル調べ(2018年)
ホットペッパービューティーアカデミー 「美容センサス2018年下期」
調査対象:15~69歳の男女各6600サンプル
リクルートライフスタイル調べ(2018年)
ホットペッパービューティーアカデミー 「美容センサス2018年下期」
調査対象:15~69歳の男女各6600サンプル
【Case1】人種・性別にこだわらない 誰もが当事者となる共通項の追求
―「ザ・ノース・フェイス」 株式会社ゴールドウイン
(写真1)THE NORTH FACE×HYKE 2019年秋冬コラボレーション「GTX Monster Parka」同一デザインでメンズ・ウィメンズとしてのラインが用意されている
「誰もが当事者になれる」シーンを大切にするコンセプト
この数年、登山やキャンプなどのアウトドアへの関心の高まりからアウトドアファッションのブランド認知が広がりつつある。中でも、登山ウエアを中心に男性的でアウトドア好きな層に支持されてきた「ザ・ノース・フェイス」は、原宿エリアでコンセプトの異なるショップを5店鋪展開するほど、認知、人気ともにアップ。今では、登山ウエアに限らずタウンユースで着られるアイテムを数多く取り扱う。
また、ユニセックスで楽しめるアイテムも多く、シーンを問わず幅広く活用できることで男性だけではなく女性からの支持も得る。なぜ、登山ウエアブランドのイメージから、男女を問わない人気ブランドへ移行することができたのか。その理由について、株式会社ゴールドウインザ・ノース・フェイス事業一部 ライフスタイルグループ マネージャー 西野美加さんを取材した。
ザ・ノース・フェイスが、男女を問わず、そしてアウトドアに限らずタウンユースのアイテムとして大きく認知されることになった取り組みがある。ファッションブランド「HYKE(ハイク)」とのコラボレーションだ。2018年春夏にスタートしてから2年目を迎えたが、どのような背景があったのだろうか。
「ザ・ノース・フェイスは、男性のイメージが強いブランドでした。女性にもアウトドアの楽しさや冒険のエモーショナルな気持ちを体現してもらいたいと考え、女性のライフスタイルをより快適に、そして格好良くする必要があると考えました。そこで、アパレルブランドの『HYKE』が大切にしているHERITAGE AND EVOLUTION(服飾の歴史、遺産を自らの感性で独自に進化させる)というマインドと、ザ・ノース・フェイスの機能とテクノロジーをうまく融合するコラボレーションが始まりました。今までザ・ノース・フェイスを購入していなかった女性の方にも興味を持ってもらう良い機会になったと思っています」と西野さんは語る。
また、ザ・ノース・フェイスとしての取り組みの面白さとして、性別のくくりではなく、アイテムを着用する「当事者」としての共通項をブランドの強みから見つけだし、マーケティングに生かしたことにある。「プロダクトには、登山のシーンやアウトドアを快適にする機能が必ず含まれています。しかし、その欲求は冒険者やコアな登山家だけが持つものではありません。『より軽く、温かく』『すぐ汗を吸って、ドライに』という思いは、シーンを変えれば誰もが当事者になりうるものです。
そのため、タウンユースのアイテムを増やしたというよりは、機能というブランドの強みを生かしながら、届けたい層に向けてコミュニケーション手法を変えたことが、結果としてマーケットが広がったように見えるのだと思います」と答えてくれた。
また、ユニセックスで楽しめるアイテムも多く、シーンを問わず幅広く活用できることで男性だけではなく女性からの支持も得る。なぜ、登山ウエアブランドのイメージから、男女を問わない人気ブランドへ移行することができたのか。その理由について、株式会社ゴールドウインザ・ノース・フェイス事業一部 ライフスタイルグループ マネージャー 西野美加さんを取材した。
ザ・ノース・フェイスが、男女を問わず、そしてアウトドアに限らずタウンユースのアイテムとして大きく認知されることになった取り組みがある。ファッションブランド「HYKE(ハイク)」とのコラボレーションだ。2018年春夏にスタートしてから2年目を迎えたが、どのような背景があったのだろうか。
「ザ・ノース・フェイスは、男性のイメージが強いブランドでした。女性にもアウトドアの楽しさや冒険のエモーショナルな気持ちを体現してもらいたいと考え、女性のライフスタイルをより快適に、そして格好良くする必要があると考えました。そこで、アパレルブランドの『HYKE』が大切にしているHERITAGE AND EVOLUTION(服飾の歴史、遺産を自らの感性で独自に進化させる)というマインドと、ザ・ノース・フェイスの機能とテクノロジーをうまく融合するコラボレーションが始まりました。今までザ・ノース・フェイスを購入していなかった女性の方にも興味を持ってもらう良い機会になったと思っています」と西野さんは語る。
また、ザ・ノース・フェイスとしての取り組みの面白さとして、性別のくくりではなく、アイテムを着用する「当事者」としての共通項をブランドの強みから見つけだし、マーケティングに生かしたことにある。「プロダクトには、登山のシーンやアウトドアを快適にする機能が必ず含まれています。しかし、その欲求は冒険者やコアな登山家だけが持つものではありません。『より軽く、温かく』『すぐ汗を吸って、ドライに』という思いは、シーンを変えれば誰もが当事者になりうるものです。
そのため、タウンユースのアイテムを増やしたというよりは、機能というブランドの強みを生かしながら、届けたい層に向けてコミュニケーション手法を変えたことが、結果としてマーケットが広がったように見えるのだと思います」と答えてくれた。
2019年、初めてネットでの抽選販売をおこなった人気アイテムのマウンテンライトジャケット
男女問わず人気の理由 工業的でミニマル&クール
ザ・ノース・フェイスには、シーズンや性別を問わず年間を通して人気のアイテムがある。Climb Light Jacket(クライムライトジャケット)は、3層で薄手の防水シェル。素材は薄いながらもハリがあり形がしっかり出るため、フード周りも格好良い。アウトドア用以外での購入も多いと話す西野さん。
「デイリーのレインウエアとしての購入も多いアイテムです。Tシャツの上に羽織ることも、男性であればスーツの上に着用することもできる。女性に至ってはワンピースの上に着用することも可能です。カラーバリエーションも豊富でアウトドアで自然を感じたい時にはビビッドなカラー。街でレインウエアとして着用したい時はアースカラーやモノトーンなど。シンプルな機能を追求し研ぎ澄まされたデザインだからこそ、どんなアイテムにもハマり、愛されているのだと感じます」
また、ザ・ノース・フェイスが、ユニセックスなブランドとして認知されるには、プロダクトとしての性質が大きく影響していた。
「これまでは比較的男性に多く購入されてきましたが、この数年で女性への認知が広がっている理由として、プロダクトの性質があると思います。シルクのような質感やウエストを絞るような女性らしさを表現することは難しいのですが、普遍的なデザインにすることで、工業的(インダストリアルデザイン)でミニマルなクールさを感じることができます。それがユニセックスで受け入れられている理由だと思います。男性のSサイズを女性が着用することもありますし、きゃしゃな男性は女性のLサイズを着用することもあります」と西野さん。
「デイリーのレインウエアとしての購入も多いアイテムです。Tシャツの上に羽織ることも、男性であればスーツの上に着用することもできる。女性に至ってはワンピースの上に着用することも可能です。カラーバリエーションも豊富でアウトドアで自然を感じたい時にはビビッドなカラー。街でレインウエアとして着用したい時はアースカラーやモノトーンなど。シンプルな機能を追求し研ぎ澄まされたデザインだからこそ、どんなアイテムにもハマり、愛されているのだと感じます」
また、ザ・ノース・フェイスが、ユニセックスなブランドとして認知されるには、プロダクトとしての性質が大きく影響していた。
「これまでは比較的男性に多く購入されてきましたが、この数年で女性への認知が広がっている理由として、プロダクトの性質があると思います。シルクのような質感やウエストを絞るような女性らしさを表現することは難しいのですが、普遍的なデザインにすることで、工業的(インダストリアルデザイン)でミニマルなクールさを感じることができます。それがユニセックスで受け入れられている理由だと思います。男性のSサイズを女性が着用することもありますし、きゃしゃな男性は女性のLサイズを着用することもあります」と西野さん。
人種、性別は関係ない本質は「冒険し続ける」
ブランドの認知および人気上昇により、新アイテムを発売する際には店頭が混み合い購入することが難しい問題も発生するようになった。そこで、問題解決のために抽選販売という手法をトライすることになったと西野さんは説明する。
「秋冬商品を発売すると、店頭がとても混み合いゆっくり商品を見ていただけないこともあります。また、SNSでの告知によって店頭前に並んでお待ちいただくケースが数多く見受けられることもあり、事前にネットで応募ができ、商品をゆっくり見ていただけるように今シーズンは抽選販売という形を取らせていただいています」
登山ウエアブランドから、ここまでブランドイメージを変えられた本質的な理由は何なのか。
「ザ・ノース・フェイスが誕生したのは1966年です。その時から、カウンターカルチャーであっても、マイノリティであっても面白くてクールなことを目指し、ポジティブに冒険し楽しんできました。それは、アスリートはもちろんのこと、プロダクトを作る側も同じ思いです。私たちが心に秘めている『NEVER STOP EXPLORING(冒険し続ける)』というマインドは、人種、性別は関係ありません。それぞれが挑戦し続けることや自然を愛する気持ちに壁などないと考えています」と西野さん。
ジェンダー 、ボーダーにとらわれず、これまでやってきたことを丁寧に伝え続けることで新しい価値観が生み出せるのではないかと締めくくった。
「秋冬商品を発売すると、店頭がとても混み合いゆっくり商品を見ていただけないこともあります。また、SNSでの告知によって店頭前に並んでお待ちいただくケースが数多く見受けられることもあり、事前にネットで応募ができ、商品をゆっくり見ていただけるように今シーズンは抽選販売という形を取らせていただいています」
登山ウエアブランドから、ここまでブランドイメージを変えられた本質的な理由は何なのか。
「ザ・ノース・フェイスが誕生したのは1966年です。その時から、カウンターカルチャーであっても、マイノリティであっても面白くてクールなことを目指し、ポジティブに冒険し楽しんできました。それは、アスリートはもちろんのこと、プロダクトを作る側も同じ思いです。私たちが心に秘めている『NEVER STOP EXPLORING(冒険し続ける)』というマインドは、人種、性別は関係ありません。それぞれが挑戦し続けることや自然を愛する気持ちに壁などないと考えています」と西野さん。
ジェンダー 、ボーダーにとらわれず、これまでやってきたことを丁寧に伝え続けることで新しい価値観が生み出せるのではないかと締めくくった。
Key Point
1 性別のくくりではなく、アイテムを着用する「当事者」としての共通項をブランドの強みから見つけてマーケティングに生かした
2 この数年で女性への認知が広がっている理由として、普遍的なデザインにして、工業的でミニマルなクールさを出した
3 「NEVER STOP EXPROLING(冒険し続ける)」というマインドは、さまざまな人種、性別は関係ない
4 ジェンダー 、ボーダーにとらわれず、これまでやってきたことを丁寧に伝え続けることで新しい価値観が生み出せる
1 性別のくくりではなく、アイテムを着用する「当事者」としての共通項をブランドの強みから見つけてマーケティングに生かした
2 この数年で女性への認知が広がっている理由として、普遍的なデザインにして、工業的でミニマルなクールさを出した
3 「NEVER STOP EXPROLING(冒険し続ける)」というマインドは、さまざまな人種、性別は関係ない
4 ジェンダー 、ボーダーにとらわれず、これまでやってきたことを丁寧に伝え続けることで新しい価値観が生み出せる
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ザ・ノース・フェイス
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