【特集】残業・食品ロスゼロでごちそうを低価格で提供。100食限定、定時で帰れる飲食店(2019年6月号)

女性マーケティング特集
2019 Vol.25
【特集】残業・食品ロスゼロでごちそうを低価格で提供。100食限定、定時で帰れる飲食店(2019年6月号)

令和・新世代リーダーの『着眼点』

2019年5月、新元号「令和」の時代が幕を開けた。今月号は、平成を振り返りつつ、令和を担う20代・30代の女性起業家へのインタビューを実施!

これからの時代、経営者はどういった視点でビジネスを仕掛け、消費者はどういった価値観で購買行動をとるのか?新世代をけん引するリーダーたちの着眼点を探る。

残業・食品ロスゼロでごちそうを低価格で提供。100食限定、定時で帰れる飲食店

「佰食屋」 株式会社minitts 代表取締役 中村朱美さん

2007年京都教育大学卒業。1日100食限定の「佰食屋」はランチ営業のみ・完売次第営業終了で、ワークライフバランスとフードロスゼロを実現。日経ウーマン ウーマンオブザイヤー2019大賞、ForbesJAPAN ウーマンアワード2018新規ビジネス賞受賞

女子大生客が9割の店舗も!味+見栄え+居心地で集客

1日100食限定、ランチ営業のみで、従業員は18時には退勤する。

そんなビジネスモデルの飲食店が、京都の「佰食屋(ひゃくしょくや)」だ。手がける株式会社minitts代表取締役の中村朱美さんに、女性を集客する仕掛けや、従業員の働き方について取材した。

佰食屋は現在、京都市内に3店舗を構え、いずれも看板メニューは肉料理。毎日13時台には完売し、休日や大型連休だと11時の開店前に整理券だけで終了してしまうことも多い。

20~30代の女性が1人でも入りやすく、ステーキ丼や肉寿司を1000円程度で食べられるカジュアルな店舗を目指した。実際に客の8割は女性で、大学生や働く女性、ママたちが訪れる。その多くが「他人のInstagramを見て来た」という。

特に、肉寿司を提供する店舗は客の9割が女子大学生。内装や食器、だし茶漬けに振りかけられている5色のぶぶあられを「かわいい」と話す。
3店舗ある佰食屋の中でも客の9割が女子大学生の「佰食屋 肉寿司専科」で人気の定食
味と写真映えを兼ね備えた肉寿司&肉茶漬けを食べられる
また、100食限定であることで、ファストパス(優先入場チケット)を得るテーマパークのように、「佰食屋の整理券をもらって食べることができた」ということが自慢につながり会話のネタとなる。

女性を集客するため意識しているのが「写真映え」と「居心地のよさ」だ。スツールやランプ、トレーなど、内装は丸みのあるもの・柔らかい色みのもの・木目調のものが多く、まるでカフェのような雰囲気。
「佰食屋」の店内
丸みのあるランプや木目調のスツールなど、カフェのようなカジュアルさを演出している
中村さんの目線に加え、女性スタッフの意見も取り入れている。

例えば食器はいくつかの候補の中から、スタッフが「これがかわいい」と言ったものを採用する。居心地の面では、和式だったトイレを洋式に変え、子ども用の食器とテーブルに取り付けられる椅子を取り入れた。また、料理を待つ間にぐずってしまうこともある小さい子ども向けに、白ご飯を先に無料で提供するサービスも行っている。
女性スタッフの意見で取り入れた、テーブルに取り付けられるベビーチェア 
内装や接客サービスなど細かな気配りは随所にあるが、一番のこだわりは「味」。食材の価格が高騰し、850円でスタートしたステーキ丼は2度の値上げを経て1000円になったが、人気は衰えない。

「女の子はおいしいものが大好きです。本当においしければ、宣伝費をかけなくてもお客さんが循環していくんです」と中村さんが語るとおり、味・見栄え・居心地のよさの三位一体で佰食屋はInstagramをはじめとするSNSに多く投稿され、クチコミが人を呼び、有料の宣伝は出したことがないという。
「佰食屋 すき焼き専科」の店内は部屋によって壁紙が異なり、来店するたびにどの部屋になるかという楽しみもある

低空飛行でも黒字ならOK。100食だからこそ見通しが立つ

「1日100食で成り立つの?」と思うが、100食を5人のスタッフで回すと決まっているため、中村さんは「最も確実に利益を出せる方法だと思います。低空飛行だけど、黒字なのでOKなんです」と話す。

整理券で時間を区切ることで、何時に何人来るかも把握でき、仕入れる食材の量、肉やご飯を仕込むタイミングも計ることが可能だ。また、仕入れた肉も使い切る仕組みが出来上がっている。具体的には、ステーキ丼に使えない切れ端はハンバーグにしたり、スジの硬い部分は肉寿司にせず煮込んでほぐして軍艦巻きにしたりと、他の店なら捨ててしまう部分をむしろおいしくアレンジして提供するようにしている。

こうした取り組みで、ゴミ出しが2日に1度でもいいほど食品ロス対策ができている佰食屋。全国的に食品ロスへの意識が高まる昨今、食料・環境問題に配慮している飲食店という点でも支持を集める。
開店前に整理券を求める行列ができることも多い

経営者➡従業員➡お客さま。一方通行の愛が好循環を生む

元々は専門学校の広報をしていた中村さん。不妊治療と仕事に追われ、子どもを産むことは難しいと感じた。そんなとき、楽しみにしていたのが夫の作るステーキ丼。この絶品料理を世の中に出したいと感じた。「子どもがいないなら、定年退職後にお店を開きたいという夢を今やろうよ」。夫を誘い、2012年に2人で佰食屋をオープンさせた。

佰食屋のコンセプトは「従業員が家族全員で晩ご飯を食べられる」こと。100食を売り切って定時に帰れる、スタッフの努力が報われる仕組みにしたかった。

3店舗でメニューの表記やレジのシステムを共通化し、空いている時期に研修を強化することで、スタッフ全員が姉妹店のヘルプが可能になっている。標準化された短時間の業務内容で、障がい者や70歳以上のスタッフも活躍する。

飲食店にもかかわらず有給の希望は100%通り、2か月に1回は3連休がある。経営者が第一にスタッフを大切にし、働きやすい環境をつくることで、スタッフはお店への愛着や気持ちの余裕が生まれる。それがお客さまに対する料理や接客の質につながる好循環を呼ぶ。

高校生のときには生徒から不評な制服を変えるために生徒会長になり、アンケートで人気の制服に一新した経験を持つ中村さん。「みんなで話し合って目標に向かうのが好き」という価値観が経営にも表れている。

子どもが2人生まれた現在、中村さん自身も短時間勤務を実現し、幼稚園の送り迎えは夫婦そろって行くことが多い。「自分が従業員として働きたいと思える会社にしたかったので、自分の夢もかなっています」と笑う。

2018年夏は大阪府北部地震、西日本豪雨など災害が続き、連日50食しか売れなかった。その経験から現在、逆に1日50食でも成り立つかを検証する店舗「佰食屋 1/2」を企画中だ。「確実に利益が出る働き方を確立し、フランチャイズすることで日本中に働きやすさを広めていきたい」とビジョンを語る。

“小規模だが、超ホワイト企業”。

こんな会社が増えていったとき、日本の働き方は大きく変わるかもしれない。

Key Point

1. 1日100食限定の飲食店。売り切って定時に帰る、従業員の努力が反映される仕組み
2. 女性客が8割。女性の心をつかむ鍵は、味+写真映え+居心地のよさ
3. 100食限定で仕込みの見通しが立ち、食品ロス対策→イメージアップにつながる
4. 標準化と短時間の業務内容で、障がい者や高齢のスタッフも活躍する

令和のビジネスのポイント

▶ ぜひ社会にあるべきという必然性
▶ 「誰の何を解決するか」役割が明確
▶ 社会貢献が付加した商品やサービス
▶ スタッフの働きやすさを重要視

令和の消費のポイント

▶ 情報収集はSNSとアプリが必須
▶ 自分の世界観を演出できるかどうか
▶ 質か価格かはシーンで優先が変わる
▶ 好きなものには消費を惜しまない
取材・文/長濱有莉、水沼遥

関連記事:特集(令和・新世代リーダーの『着眼点』)

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