【特集】知らない世代に再燃「リバイバルブーム」(2017年11月号)

女性マーケティング特集
2017 Vol.6
【特集】知らない世代に再燃「リバイバルブーム」(2017年11月号)
(左)写ルンですで撮影(右)スマートフォンで撮影。写ルンですは全体が色あせたように写り、味が出る
 かつて流行したものが再注目されるリバイバルブームが起きている。具体的には10~30代の若い女性たちがインスタントカメラやカセットテープ、レコードを手に取り、ディスコや古くからある遊園地へと足を延ばしている。例えばバブル期のネタとファッションで人気を博す芸人・平野ノラ。これを彷彿とさせる出で立ちで踊る“バブリーダンス”を披露した大阪府立登美丘高校のダンス部は、8月の第10回日本高校ダンス部選手権で準優勝。9月に公開したPVは2日で250万再生を突破した。
 若い女性たちを引きつけるのは「懐かしさ」よりも「新しさ」。20年以上前の全盛期をあまり知らない女性にとって、かつてのトレンドは「古くてダサいもの」ではなく「レトロでかわいいもの」となっている。
リバイバルブームの例
●80年代ファッション…ペンシルスカート (鉛筆のように細いシルエットのタイトスカート)など
●アナログレコード…ソニー・ミュージックエンタテインメントが29年ぶりに国内自社生産を復活、HMVは渋谷と新宿に専門店をオープン
●ディスコ…「マハラジャ」は六本木や大阪など5店舗が復活、女子学生入場無料の割引も
●漫画アニメ…「おそ松くん」「セーラームーン」の新作アニメ放送、「ベルサイユのばら」は特別展が開催
リバイバルブームに関するWEBアンケート調査
出典:トレンド総研「バブル期トレンドリバイバルに関するレポート」
「バブル期トレンドのリバイバルを感じる」という人は全体では42%だが、若い女性に絞ると61%。バブル期を知らない若い女性が特にリバイバルブームを感じているようだ。

CASE.1 富士フイルム 写ルンです&直営写真店

フィルム写真・現像にハマる女性たち。きっかけをつくるメーカー企画

写ルンですの現行モデルのうちスタンダードな「写ルンです シンプルエース」
 インスタグラムで投稿数が急増しているハッシュタグがある。2015年秋に6万8000件、2016年秋に12万件、そして2017年9月には28万件を突破。それが「#写ルンです」だ。
 写ルンですは富士フイルムが1986年に発売したレンズ付フィルム。カメラがまだ高級品で専門的な知識も必要だった中、「いつでも、どこでも、誰でも、簡単に撮れる」というコンセプトで開発された。日本中に浸透したが需要のピークは1997年で、その後はデジタルカメラやカメラ付き携帯、スマートフォンの普及に伴い降下。2010年にはピーク時の5%以下まで落ちこんだ。しかしインスタグラムの投稿増加と並行して、昨年ついに下げ止まりを見せた。
 スマートフォンを使いこなす若い世代が写ルンですで自分たちの日常風景を撮り SNSにアップする動きは、昨今のリバイバルブームの中でも顕著なものだろう。
 再注目のきっかけは、2014年に重要科学技術史資料に登録されたこと。さらに2015年にアイドルグループAKB48の横山由依さんや若手写真家の奥山由之さんなど、若い世代に影響を与えるインフルエンサー、ファッションリーダー的存在が「写ルンです好き」であることを発信するとファンも写ルンですを使い始め、同世代へと広まっていった。
 若い世代にブームが起きている写ルンです、そして若い女性が写真をプリントしに集まる東京・原宿の富士フイルム直営写真店「WONDER PHOTO SHOP」 について、富士フイルム イメージングシステムズ株式会社の築地紀和さん、門田 裕さんに話を聞いた。
富士フイルムイメージングシステムズ株式会社の門田さ ん(左)、築地さん(右)。写ルンですで撮影

若い女性が写ルンですを使いたくなる企画を次々連打

別売りの写ルンですデザインカバー。箱型に組み立て、写ルンですを入れてくり返し使える
 若い女の子たちが、写ルンですを使うアイドルやモデルの真似をして楽しんでいる。築地さんがそうした動きを感じたのは2015年の夏ごろ。SNSで「#写ルンです」の投稿が増えているのを知った。
 「スマートフォンとは違う形で、フィルム独特の淡い感じの仕上がりを楽しむ人が増え始めました。あと何枚かな…と残りの枚数を考えて撮ることや、どのように写っているかすぐにわからないことも新鮮なようです」。2016年に写ルンですが30周年を迎えることを機に何かやろうと考える中、若い世代のニーズを感じ「若い人をターゲットに新たな需要を作っていこう」 と決めた。
 それまでの写ルンですは、ウェブサイトに商品の掲載のみで、使い方などの情報は載せていなかった。そこで、あらためて使い方をまとめたリーフレットを作成。その名も「写ルンですの使い方BOOK」。シーンに応じた3種類の写ルンですの選び方や、フラッシュを使うポイント、撮り終えた写ルンですはプリントだけでなく データCDにもできることなど、基本的な使い方を発信した。
写ルンですの使い方BOOK
 同時に立ち上げたのが「写ルンです Life」というプロモーションサイトだ。リーフレット同様に使い方を解説しつつ、著名人のインタビュー記事やフォトギャラリーも公開している。歌手の安田レイさん、モデルの池田エライザさん、セクシーアイドルユニットのベッド・インさん※など、若い女性に人気、かつ以前から写ルンですを使用していたという顔ぶれが並ぶ(※ベッド・イン…バブル期のファッションと言動で人気を集めるユニット。セクシーアイドルでありながらファンの大半が20~30代の女性で、撮影会を「写ルンです会」と呼び、ファンと“バブルっぽいこと”を一緒に楽しんでいることを特筆したい)。
 また、初代写ルンですに似たデザインカバーのアニバーサリーキットは、第1弾・ 第2弾ともに数か月で完売。初代写ルンですを知る人には古く見えても、若い女性にとってはレトロでかわいく、欲しくなるデザインであることがうかがえる。
 写ルンですを入れる専用のデザインカバーはコラボレーションも活発だ。ハローキティやファッションブランドのアニエスベー、歌手のBENIさんなど多種多様。家電量販店には革のケースも並んでいる。写ルンですを自分なりに楽しみたい・カスタマイズしたい、愛着を持って使いたいという若い女性たちのニーズが見えてくる。
 「写ルンですの使い方BOOK」や「写 ルンですLife」、デザインカバーはいずれも若い女性に支持されやすいデザインと なっている。なにが流行しているか、どう使われているかを知るのはSNSなどが多いという築地さん。“いいね!”の数などを参考にするという。また、今後については「プリントせずデータだけに留める方も増えていますが、形に残す楽しさも伝えていけたらと思います」と語る。

写ルンです月20→100本販売。若い世代向けの直営店

富士フイルムの直営写真店「WONDER PHOTO SHOP」店内
 東京・原宿の大通りに構える富士フイルムの直営写真店「WONDER PHOTO SHOP」では、写ルンですの売り上げが伸びている。女性たちは写ルンですをどのように楽しみ、店舗をどう利用しているのだろうか。門田さんに尋ねた。
 「オープンは2014年。未来のユーザーである若い世代に写真をプリントする楽しさを体験してもらい、自分なりの楽しみ方を見つけてもらう意図がありました」
 「従来は現像という目的がないと行くことのなかった写真店に気軽に入ってもらいたい」という思いを反映した店内は、木のインテリアや黒板が目立つカフェのような内装となっている。ユーザーの半数以上が女性で、コア層は20代前半。店舗スタッフも大学生~20代と若く、サンプルのアルバムなどもスタッフ自身が撮影・作成したものが並ぶ。時にはプリントサービスの提案を行うことも。ユーザーと同世代のスタッフがいることで、店舗の親しみやすさがアップしている。
 写ルンですの販売数は月に20本程度だったが、ブームに火がついた2015年末からは月100本以上を継続。店舗のポイントカードと別に写ルンです専用のポイントカードがあり、写ルンですの購入1回につき1ポイントをもらえる。貯まったポイントに応じてプリント無料サービスや写ルンです本体、写ルンです用のハンドストラップと交換できる。この店舗をくり返し利用したくなる仕掛けだ。実際に、ポイントを貯め終えたとうれしそうに報告するお客さまもいる。
 また、写ルンですは店舗入口のもっとも目立つテーブルに陳列してある。入口のテーブルは年間の販促カレンダーを立て、定期的にビジュアルを変えるようにしているという。夏から秋にかけては、「夏の思い出をアルバムに残しませんか?」→ 「敬老の日、おじいちゃんおばあちゃんに家族写真を贈りませんか?」→「ハロウィンパーティーに写真を撮りませんか?」といった具合だ。女性客は定期的な店内の変化、特に季節感の演出を敏感に察知し、足を運びたくなる。

アナログブーム持続。「形を残す」 ことに特化したサービスと商品

プリントサービスの「コラージュプリント」(上)と「ワンダーシャッフルプリント」(下)
 シンプルなプリント以外のサービスが多く利用される点もこの店舗の特徴だ。複数の写真を組み合わせて一枚にプリントできる「コラージュプリント」「ワンダーシャッフルプリント」というプリントサービスの利用率が伸びている。若者にとっては、プリクラのようで親しみのある形だ。さらに店内のフリーテーブルでは常備されている大量のマスキングテープやカラーペンを無料で使うことができ、写真を自由にデコレーションできる。その他、写真展やワークショップ、写ルンですをテーマにしたトークイベントを定期的に開催するなど、若い世代が写真に興味を持つイベン トにも注力している。
 このような数々の仕掛けの結果、詳細な数値は非公表ながら、売上や来客数は年々伸びているという。WONDER PHOTO SHOPは店舗を新商品・企画のテストマーケティングの場と位置づけ、新鮮さやワクワク感を覚える店づくりによって新しい顧客を取りこんでいる。
 そのため、一般の写真店がプリント目的で来店する客が大半であるのに対し、WONDER PHOTO SHOPは新規ユーザーの来店率が7割近い。ここを集合場所にする女性客もいるといい、原宿の新たなランドマーク的存在になりつつあるように感じた。
 富士フイルムは今年「PhotoZINE」 という新たなフォトブックサービスを開始。また、壁を傷つけずに写真を貼れるグッズ「シャコラ」は、WONDER PHOTO SHOPのお客さまの声を商品企画に反映させることで販売が急進。現在では全国展開する商品として成長中だ。
 写ルンですとWONDER PHOTO SHOPを通じ写真を「形にしてほしい」 という富士フイルムの思いと「形にしたい」 というユーザーのニーズが重なる。デジタルが飽和した今、若い世代のアナログへの回帰はしばらく続きそうだ。
WONDER PHOTO SHOP内のフリーテーブルで写真をデコレーションする様子
COMPANY DATA
富士フイルムイメージングシステムズ株式会社
東京都品川区西五反田3-6-30 富士フイルム五反田ビル
PHONE:03-5745-2241
富士フイルムイメージングシステムズSITE:http://ffis.fujifilm.co.jp/
写ルンですLife SITE:https://sp-jp.fujifilm.com/utsurundesu/index.html

WONDER PHOTO SHOP
東京都渋谷区神宮前6-29-4 SITE:https://wps-jp.fujifilm.com/

CASE.2 あらかわ遊園

年間40万人が来園。遊具や動物を100円で楽しめるレトロ遊園地

1922年から続く東京・荒川区の「あらかわ遊園」
 レトロで注目されているのはモノばかりではない。入場料大人200円、子ども100円――かつてデパートの屋上にあったような遊園地が話題だ。
 東京都内唯一の区立遊園地「あらかわ遊園」(東京・荒川区)。1922年に開園し、観覧車や日本一遅いジェットコースター、メリーゴーラウンドなど小規模な遊具がコンパクトにまとまる。「今どき」なものはない。しかし年間の入園者数は40万人を超える。グーグルトレンドを見ると「あらかわ遊園」の検索指数は2016年4月から急上昇しており、リバイバルブームの中で注目されていることがわかる。
メリーゴーラウンドの馬はレトロなかわいらしさがある
 三連休の初日。都内唯一の路面電車・ 都電荒川線を「荒川遊園地前駅」で降りてあらかわ遊園へ向かう途中、幼い女の子を連れた夫婦とすれちがう。「アソボ~ノだったらもっとお金かかってたよね、こっちにして良かったね」とママが話しているのが聞こえてくる。アソボ~ノとは東京ドームシティにある屋内遊戯施設で、入場料は小学生以下の子どもが60分930円。あらかわ遊園はそれよりも安く収まるうえに、満足度も高いようだ。
 入口で大人200円を支払いゲートをくぐると、遊具のある「のりもの広場」に出る。観覧車やジェットコースターには子どもと保護者の列ができているが、次の回に乗れる程度に空いている。遊具ののりもの券は1枚100円、6枚セットが500円。観覧車を始めとした遊具は6つある。中学生までの子どもは1回1枚で乗ることができるため、500円あればあらかわ遊園の遊具はひととおり満喫できてしまうのだ。待ち時間を持て余すことなく好きなだけ遊ぶことができ、家族で1日いても5000円あれば充分だろう。
 動物の広場にも人が集まっていた。のりもの券1枚でヒツジやヤギ、ウサギとふれあったり、ポニーの乗馬体験ができる。クジャクが柵を越えて飼育スペースを抜け出し人間のそばを悠々と闊歩している自由な光景は、現代ではなかなか新鮮に映る。
動物広場で動物と触れ合う子どもや撮影する女性の姿
都会で育つ子どもが動物とふれあう機会を設けるにはうってつけだ。また、園内に は家族連れに加えて一眼レフカメラを持った若い女性グループもおり、レトロな遊具や動物を近距離で熱心に撮影していた。
 インスタグラムで「#あらかわ遊園」の投稿数は5000件にのぼり、「レトロ遊園地最高!」「昭和感がとっても渋い!けど、癒されました」といった投稿が並ぶ。投稿者は小さい子を持つママが中心で、遊具・ 動物を被写体にした写真好きな若い女の子もいる。
 料金だけでなく、こうしたレトロでかわいい雰囲気、そして人情もこの遊園地の魅力だ。スタッフが「気をつけてねー」と遊具に乗る子どもに声をかけ、釣り堀では初心者に指導。地域の人が子どもを見守る、昭和の人情に溢れた場所という印象を受けた。こうしたあたたかさを求め、若い世代があらかわ遊園には集まっている。
COMPANY DATA
あらかわ遊園
東京都荒川区西尾久6-35-11
PHONE:03-3893-6003
SITE: http://www.city.arakawa.tokyo.jp/yuuen/
Review
「エモい」という若者言葉がある。「エモーショナル」を形容詞化したもので、「ぐっとくる」「切ない」「寂しい」など心の機微を広く表す。写ルンですやワンコインで遊べる遊園地など、昔は当たり前にあったものが若い世代には「エモく」見える。温かさやかわいさを見出し、心を動かされる。レトロブームはいわば「エモい」を体験をしようとする動きと隣り合わせだ。ネット社会の中でリアルの温かさを楽しむ、こうした消費は今後もしばらく続くのではないだろうか。

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