買い付けだけにとどまらないバイヤー。購買➡商品開発➡研修をワンストップ

女性マーケティング特集
2019 Vol.28
買い付けだけにとどまらないバイヤー。購買➡商品開発➡研修をワンストップ
松尾さんが店舗スタッフとカリフラワー畑を視察しに行ったときの様子。こだわり抜いた生産地に行き、農家の人の思いを知ることで、スタッフの接客士気があがる
株式会社スープストックトーキョー 商品部 開発管理グループ購買担当 松尾琴美さん

材料の買い付けだけでなく、人をつなげ売り上げる

首都圏を含む12県で、69のスープ専門店を展開するスープストックトーキョー。同社で食材の購買をメインで担当する松尾琴美さんの業務は、驚くほど多岐にわたる。素材の発掘や調達、購買はもちろんのこと、生産地との交渉、加工工場のスケジュール調整や店舗で利用するカップ・スプーンの制作に至るまで、幅広く1人でこなしている。社内での打ち合わせや試作品作りに追われる一方で、スーツケースを片手に、週に1度は産地に足を運ぶ。「日本全国が買い付けの対象です。たとえば、良いタマネギを見つけたら購入する。それだけではなく、そこから商品にするまでが私の仕事です」と松尾さんは語る。

入社して6年、これまで数多くのスープを企画し、世の中に送り出してきた。なかでも、松尾さんの記憶に残るスープがある。震災復興を願い、震災の翌年から販売を続ける宮城県発祥の「女川産さんまのつみれスープ」だ。入社前からある商品だが、仙台の店舗スタッフの一言をきっかけに3年前から一緒にさんまの加工地に赴き始めた。その後、産地に行ったスタッフたちは女川町のさんまのスープを楽しんだ消費者の声や思いを自主的に産地に届け始めた。「おいしい」「ありがとう」といった消費者からの約600枚の手書きカードを生産者に届け、その後の絆を築くきっかけとなった。
女川町のさんまのスープを楽しんだ消費者の声や思いが詰まったカード。約600枚の手書きカードが生産者に届けられた
「店舗スタッフの行動は、現場で学んだことで生まれました。自主的に産地とお客さまをつなげてくれた、とてもうれしい出来事でした」と松尾さんは振り返る。
産地を知る体験は、期間限定で店頭に並ぶ「カリフラワーの冷たいポタージュ」にも生かされている。2年前より、店舗スタッフたちは静岡県のカリフラワー畑に足を踏み入れ、収穫を手伝うようになった。畑での体験を通じて、「丁寧な野菜作りで日本の農業を活性化したい」と願う農家の思いを知り、スタッフたちは店頭でスープが出来上がるまでのストーリーをしっかり話せるようになった。こうしたスタッフの変化は数字にも表れ、当初1週間の販売期間を見積もっていた同スープは、わずか3日で売り切れに。生産者のメッセージ、そしてなによりも自分たちで収穫して作ったスープだという当事者としての意識が、結果につながる転換点になったと松尾さんは分析する。
販売期間を1週間予定していたのに、3日で売り切れた「カリフラワーの冷たいポタージュ」 

本物の味を知るためには物産展や道の駅に足を運ぶ

前職でインテリアデザイン業界のバイヤー経験を積んできた松尾さんだが、転職して初めて関わった食の世界では慣れないことも多かった。彼女は、一体どのようにして、消費者の心をつかむ商品を考え出せるようになったのか。松尾さんいわく、まず日課として地元のスーパーはもちろん、外出先や出張先などでも、できるだけさまざまな物産展、道の駅などに寄るようにしているという。普段使わない駅で降りたときは、その沿線上にある鉄道会社系列のスーパーにも必ず入る。一見似たような商品が並んでいるように見えても、店舗や地域によって扱う商品は異なるからだ。新しい素材に出会ったときは心底ワクワクし、すかさず商品ラベルを調べどんな生産者が作った商品なのかを頭にたたき込む。生活の一部になるほど、松尾さんにとっては自然な行為だ。「癖がついて、愛犬の餌のラベルも厳しく見てしまいます」と笑う。

また、「本物を食べなさい」という社内の教えを実行するため、美食家の社員たちが発信するSNSのチェックも欠かさない。そこで紹介されている飲食店にいくつも出向き、全身で料理を味わう。いま何が流行していて、どんなものが消費者に受け入れられているのか。目と舌で実際に体験し、地道に情報を集めるのが松尾流だ。「ほかにも、『料理通信』には毎号目を通します。また、社の商品開発部のメンバーとはプライベートで旅行にも行きます。旅行先で見つけた素材からスープを作りたいねって話すと、話し合いが始まってポンポンと形になることもあります」

さらに松尾さんは、農家の方々との連絡を密にしているという。お互いの家族の近況を語り合い、育っていく作物を眺め、同じ時間を共有することを大切にしている。「こういう仕事って、人と人とのつながりがすごく大事だと思います。やりたいというわがままだけでは成り立ちませんし、作る側と頼む側の両方が反応して、一緒に商品を作っていく姿勢が必要ですよね」と語ってくれた。
株式会社スープストックトーキョー商品部 開発管理グループ 購買担当松尾琴美さん。休日は甘酒や味噌作り体験にも足を運ぶという
一問一答

Q.プライベートで仕事につながる視点は?
社内の開発担当者とホームパーティーや旅行に行き、知らない食材に出会ったり食べたりすることで新しい商品コンセプトの話が進みやすくなる。

Q.仕事のために行っている勉強は?
レストランなどの現地に行くだけでなく、毎月「料理通信」に目を通すことを欠かしません。

産地視察を定期研修化し、店舗スタッフの士気を上げる

松尾さんには、温めている計画がある。それは、産地への視察を会社の定期研修として積極的に組み入れることだ。今までは、各店舗スタッフの有志が訪れていたが、実際にその場に行くことでおのおのが高いモチベーションを維持できることが分かった。同時に、農業人口が減少しているなか、視察に訪れた同社スタッフによって人手不足を補うことができたら、農家にとっても助けになる。補完し合いながら、ひとつのものを作り上げる経験を、1人でも多くのメンバーと共有したいと松尾さんは願っている。

「農業に関わる労働力が減り続ければ、10年後、食べたいものが手に入らなくなる。そうならないために、私のようなバイヤーが生産地をよく知った上できちんとおいしいものを育て、良いものを買って商品を作る。消費者が真においしいものを知れば、おいしくないものを購入する消費者が減る。そうすれば、食品市場には品質の良いものしか出回らなくなり、生産者を守っていける。この仕組みが大事になるのではないでしょうか」おいしい食材を追求し続けているバイヤー、松尾さんだからこそ気付いた未来図だ。
Company Data
株式会社スープストックトーキョー
東京都目黒区中目黒 1-10-23
シティホームズ中目黒 203
PHONE:03-5724-8523
https://www.soup-stock-tokyo.com/

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