【特集】ペット共生型福祉施設で人も動物も幸せに。 犬と過ごすデイサービス&障がい者グループホーム 「わおん」(2018年12月号)
女性マーケティング特集
2018 Vol.19

INDEX
【Feature】 衣食住+娯楽を共にするペット
核家族化・少子化を背景に、ペットが家族の一人としての役割を果たすようになった。一般社団法人ペットフード協会の調査によれば、飼育頭数は犬が減少傾向、猫は横ばいにあるが、総務省の家計調査を見ると1世帯あたりのペット関連支出は増加傾向にある。ペットのための出費は惜しまず(下図1)、特に35~59歳の単身女性はペットに消費しているという結果もある(下図2)。ペットと衣食住・娯楽を共に楽しむため、ニーズが高まるペット向けサービスを取材した。
(取材・文/長濱有莉)
(取材・文/長濱有莉)
飼い主の心をつかむサービス4つのポイント
1.日常も季節イベントもペットと一緒に楽しめる
2.ペットを第一に考える細やかな接客態度
3.ペットを通じて他者との交流が生まれる
4.異業種のノウハウの応用で新鮮さがある
2.ペットを第一に考える細やかな接客態度
3.ペットを通じて他者との交流が生まれる
4.異業種のノウハウの応用で新鮮さがある
ペット共生型福祉施設で人も動物も幸せに。 犬と過ごすデイサービス&障がい者グループホーム 「わおん」
Company Data
株式会社CARE PETS
東京都千代田区九段南2-4-4
三和九段ビル5階
PHONE:0120-949-615
https://care-pets.jp/
わおん:https://waonpet.com/
株式会社CARE PETS 代表取締役 藤田英明さん(左)とデイサービスのスタッフたち。動物好きなスタッフが結集している
東京都千代田区九段南2-4-4
三和九段ビル5階
PHONE:0120-949-615
https://care-pets.jp/
わおん:https://waonpet.com/
株式会社CARE PETS 代表取締役 藤田英明さん(左)とデイサービスのスタッフたち。動物好きなスタッフが結集している
保護犬&愛犬と過ごせる高齢者向けデイサービス
2018年6月に東京・大田区に開設した「わおん」は、保護犬が暮らし利用者も愛犬と通える、犬と過ごすことのできる高齢者デイサービスだ。
手がけたのは株式会社CAREPETS(ケアペッツ)。同社は動物看護師によるペットシッター、介護・看護などのホームケアサービスを展開し、「わおん」は保護犬・猫と障がい者が暮らすグループホームも展開する。
「人間福祉と動物福祉の追求」を理念に掲げる同社のサービスや思い、展望について、代表取締役藤田英明さんを取材した。取材場所はデイサービス「わおん」。中に入ると、この日は5名の利用者が小型犬3匹と過ごしていた。
わおんが引き取った保護犬のコロンとスタッフの愛犬、そして利用者の女性の愛犬だ。わおんは高齢者に対する食事や入浴のサポート、レクリエーションに加えて、犬との散歩や、愛犬に対する食事やトリミング、シャンプー、健康状態をチェックするサービスも行っている。犬用のバスルームは利用者のバスルームからマジックミラー越しに見えるつくりになっており、「愛犬と離れ離れになりたくない」を叶える設計が盛り込まれている。
利用者の年齢は80代が中心で、日本の高齢者の男女比に従い女性の利用者が7~8割を占める。意外なのが、犬を飼っていない利用者が7割に上る点。
「高齢でペットを飼う自信はないが、動物が好き」という人が、保護犬や他人の飼い犬と触れ合うことを楽しみにわおんを利用しているのだ。
他のデイサービスだと行きたがらないが、「コロンや他の犬たちに会いたいのでわおんなら行く」という利用者もいる。
スタッフは元ゲームエンジニアで介護福祉士兼ペットシッター士の資格を持つ人や、元大手航空会社グランドスタッフの人などユニークな経歴があり、全員が「犬と働ける施設と聞いて応募した」と話す。
また、特徴的なのがカラフルな内装。介護施設=清潔感のある白という従来のイメージを打ち破り、壁はピンク、床やテーブルは木目調だ。
「ペット業界の華やかさを盛り込み、カフェ風にした」という。利用者が落ち着いた気分で帰宅できるよう、天井のライトは午前は白、午後はオレンジに変化する。
人と犬の両方に対するサービスや、常識を覆す内装など、今までにないアイデアは、介護業界のカリスマ的存在と呼ばれる藤田さんの経験と発想が大きい。
手がけたのは株式会社CAREPETS(ケアペッツ)。同社は動物看護師によるペットシッター、介護・看護などのホームケアサービスを展開し、「わおん」は保護犬・猫と障がい者が暮らすグループホームも展開する。
「人間福祉と動物福祉の追求」を理念に掲げる同社のサービスや思い、展望について、代表取締役藤田英明さんを取材した。取材場所はデイサービス「わおん」。中に入ると、この日は5名の利用者が小型犬3匹と過ごしていた。
わおんが引き取った保護犬のコロンとスタッフの愛犬、そして利用者の女性の愛犬だ。わおんは高齢者に対する食事や入浴のサポート、レクリエーションに加えて、犬との散歩や、愛犬に対する食事やトリミング、シャンプー、健康状態をチェックするサービスも行っている。犬用のバスルームは利用者のバスルームからマジックミラー越しに見えるつくりになっており、「愛犬と離れ離れになりたくない」を叶える設計が盛り込まれている。
利用者の年齢は80代が中心で、日本の高齢者の男女比に従い女性の利用者が7~8割を占める。意外なのが、犬を飼っていない利用者が7割に上る点。
「高齢でペットを飼う自信はないが、動物が好き」という人が、保護犬や他人の飼い犬と触れ合うことを楽しみにわおんを利用しているのだ。
他のデイサービスだと行きたがらないが、「コロンや他の犬たちに会いたいのでわおんなら行く」という利用者もいる。
スタッフは元ゲームエンジニアで介護福祉士兼ペットシッター士の資格を持つ人や、元大手航空会社グランドスタッフの人などユニークな経歴があり、全員が「犬と働ける施設と聞いて応募した」と話す。
また、特徴的なのがカラフルな内装。介護施設=清潔感のある白という従来のイメージを打ち破り、壁はピンク、床やテーブルは木目調だ。
「ペット業界の華やかさを盛り込み、カフェ風にした」という。利用者が落ち着いた気分で帰宅できるよう、天井のライトは午前は白、午後はオレンジに変化する。
人と犬の両方に対するサービスや、常識を覆す内装など、今までにないアイデアは、介護業界のカリスマ的存在と呼ばれる藤田さんの経験と発想が大きい。
1.東京大田区にある、保護犬&愛犬と過ごせる高齢者デイサービス「わおん」。体操の時間も足元で犬たちが遊んでいた
2.わおんで暮らす保護犬のコロン。段ボールで作ったハウスのカラフルな飾り付けは利用者が協力して行った
起業のきっかけは飼い猫の高齢化。人とペットの“老老介護”を打開したい
大学卒業後、社会福祉法人に勤めた藤田さん。
一部の人間だけが儲かる仕組みに疑問を抱き自ら起業、余っている空き家を使って小規模のデイサービス「茶話本舗」を始めた。それをフランチャイズ化し、900店舗まで拡大。
介護業界に風穴を開ける中、自身の飼い猫が認知症になってしまった。
フードや医療の進化で犬や猫も長寿化し、人間同士だけでなく人間とペットも「老老介護」に陥っている。「自分と同じようにペットの介護や看護などで困っている人が大勢いるのでは?」という思いから、要介護の医療が必要な犬猫を専門的に世話できるホームケアサービスとしてCAREPETSを立ち上げた。
女性が単身でペットを飼っているケースも多いことから、スタッフは全員女性という特徴を持つ。このユーザーのうち約5割が65歳以上の高齢者で、「デイサービスに通いたいが、ペットを自宅に置いておくのはかわいそう」という声が聞かれるようになった。
そこで、動物と触れ合うことで心が落ち着いたりストレスが軽減したりというアニマルセラピーが期待できる点から、デイサービス、さらには障がい者グループホームの機能を持つペット共生型福祉施設「わおん」の開設に至ったという。
一部の人間だけが儲かる仕組みに疑問を抱き自ら起業、余っている空き家を使って小規模のデイサービス「茶話本舗」を始めた。それをフランチャイズ化し、900店舗まで拡大。
介護業界に風穴を開ける中、自身の飼い猫が認知症になってしまった。
フードや医療の進化で犬や猫も長寿化し、人間同士だけでなく人間とペットも「老老介護」に陥っている。「自分と同じようにペットの介護や看護などで困っている人が大勢いるのでは?」という思いから、要介護の医療が必要な犬猫を専門的に世話できるホームケアサービスとしてCAREPETSを立ち上げた。
女性が単身でペットを飼っているケースも多いことから、スタッフは全員女性という特徴を持つ。このユーザーのうち約5割が65歳以上の高齢者で、「デイサービスに通いたいが、ペットを自宅に置いておくのはかわいそう」という声が聞かれるようになった。
そこで、動物と触れ合うことで心が落ち着いたりストレスが軽減したりというアニマルセラピーが期待できる点から、デイサービス、さらには障がい者グループホームの機能を持つペット共生型福祉施設「わおん」の開設に至ったという。
犬と暮らし、地域に溶けこむ。 全国に広まる兆しの「わおん」モデル
グループホームは現在千葉に3棟あり(2018年10月時点)、新しく立ち上げるたびに約1か月で入所者が満員になる。
現在グループホームで暮らす保護犬のリョータは散歩好き。入所者はリョータと散歩に出ることで運動ができるうえ、犬を通じて近所の人たちとの会話が発生し、地域に溶けこみやすくなっている。
普段も特に男性の入所者たちはリョータが不在のときは自室にこもりがちになるが、リョータがいると食堂や談話室に集まってくるという。
ある入所者は千葉から東京まで一人での通勤やゴミ出し当番を受け持つことができるようになり、「犬や他の入所者との触れ合いを通じて、徐々にキャパシティが広がっている」と藤田さんは保護犬がいる効果を語る。
わおんは現在、あらかじめ決めておいた配分率で収益を分け合う契約形態で参画企業を募集。すでに北海道、愛知、福岡など7都道府県で「わおん」モデルの障がい者グループホームの開設が決まった。藤田さんは日々、日本各地の説明会に飛び回る。
ホームケアサービスが広まることでやむなく手放される犬猫が減り、「わおん」のモデルが広まることで各施設で保護犬猫が引き取られる。
犬猫は殺処分される運命から救われるうえに、高齢者や障がい者の生活を精神的にサポートするアニマルセラピーの役割を担うことにつながる。
同社のビジネスが拡大することで、人と動物がお互いに癒し合う好循環が生まれていく。「今後5年で1万施設まで拡大し、海外にも展開したい」と語る藤田さん。
介護×動物の切り口で人と動物が等しく豊かに暮らすわおんのビジネスモデルに今後も注目したい。
現在グループホームで暮らす保護犬のリョータは散歩好き。入所者はリョータと散歩に出ることで運動ができるうえ、犬を通じて近所の人たちとの会話が発生し、地域に溶けこみやすくなっている。
普段も特に男性の入所者たちはリョータが不在のときは自室にこもりがちになるが、リョータがいると食堂や談話室に集まってくるという。
ある入所者は千葉から東京まで一人での通勤やゴミ出し当番を受け持つことができるようになり、「犬や他の入所者との触れ合いを通じて、徐々にキャパシティが広がっている」と藤田さんは保護犬がいる効果を語る。
わおんは現在、あらかじめ決めておいた配分率で収益を分け合う契約形態で参画企業を募集。すでに北海道、愛知、福岡など7都道府県で「わおん」モデルの障がい者グループホームの開設が決まった。藤田さんは日々、日本各地の説明会に飛び回る。
ホームケアサービスが広まることでやむなく手放される犬猫が減り、「わおん」のモデルが広まることで各施設で保護犬猫が引き取られる。
犬猫は殺処分される運命から救われるうえに、高齢者や障がい者の生活を精神的にサポートするアニマルセラピーの役割を担うことにつながる。
同社のビジネスが拡大することで、人と動物がお互いに癒し合う好循環が生まれていく。「今後5年で1万施設まで拡大し、海外にも展開したい」と語る藤田さん。
介護×動物の切り口で人と動物が等しく豊かに暮らすわおんのビジネスモデルに今後も注目したい。
Key Point
1.「犬がいるのが当たり前」な高齢者デイサービス&障がい者グループホーム
2.人間とペットの老老介護をサポートするサービスからスタート
3.収益分配のシステムで参画企業を募集。全国で続々と開設が決定
4.保護犬猫を引き取るため、施設が広まるほど犬猫が殺処分から救われる
1.「犬がいるのが当たり前」な高齢者デイサービス&障がい者グループホーム
2.人間とペットの老老介護をサポートするサービスからスタート
3.収益分配のシステムで参画企業を募集。全国で続々と開設が決定
4.保護犬猫を引き取るため、施設が広まるほど犬猫が殺処分から救われる