【特集】週末の音楽会は地域の演奏家たちが出演。買物客ファンの輪が広がる(2017年7月号)
女性マーケティング特集
2017 Vol.2

ワタシが主役の場に集う。「共演」企画が惹きつける
忙しい女性増加によって買物時間は効率化したい一方で、出かけるなら思い出時間にしたい。
「買う」は「体験」から「共演」へ。
忙しい女性増加によって買物時間は効率化したい一方で、出かけるなら思い出時間にしたい。
「買う」は「体験」から「共演」へ。
イオンスタイル御嶽山駅前
週末の音楽会は地域の演奏家たちが出演
東京都大田区の東急池上線沿いにあるイオンスタイル御嶽山駅前(おんたけさんえきまえ)は、週末になると洒落たJAZZの生演奏が店内に流れてくる。地域の人たちがどんどん集まり、イートインスペースの椅子はすぐにいっぱい。毎週、定期音楽会に変わる。演奏家たちは地域在住のアーティストを中心に構成され、交代で出演する。
イオンスタイル御嶽山駅前は、2015年12月にリニュ―アルオープンしたイオンの時間消費型店舗。特に2階はこれがスーパー?と驚く空間で、中央にワインを楽しめるイオン初展開のバルがある。その奥には充実のリカー売場があり、ワインを中心に洋酒や輸入ビールなどが揃っている。取材日は土曜の午後。すでにカウンターやイートインでは、ワイングラスを傾けて生ハムやチーズをつまみにまどろむ人たちが点在していた。中でも興味深いのは60代、70代と思える女性のカウンターでの一人飲みの姿。よそではなかなか見られない風景ではないだろうか。
考えてみると高齢者の一人暮らしは増えているが、女性一人でバルに行くのは30、40代でも勇気のいること。高齢者での一人飲みはなおさらハードルが高い。確かにスーパーなら安心して好きなワインを楽しみ、賑わいと時間を楽しめる。この日の演奏は、ベース小美濃悠太、ヴィブラフォン山本玲子の2人。ほかにもフルート、ピアノ、ヴォーカル、ギターと出演者はなんと全員がプロとして活躍する顔ぶれだという。最前列に座っていた女性三人の様子は明らかに追っかけファンかと思いきや、この店で知り合って顔見知りになったお客様同士とのこと。演奏会のたびに顔を合わせることで親しくなったという。
気軽に誰もがバルでワイン。大人女性の一人飲みも安心
実は沿線に音楽大学があるため地元在住の音楽家は多い。ベースの小美濃氏に「失礼ながらスーパーマーケットでプロが演奏することに抵抗ありませんか」とお聞きすると「とんでもない。本当にありがたい場所です。ジャズは聞いていただける機会が少ない。好きな人でなければライブに足を運んでいただけない。ここでチラシの配布をしたり音楽に触れてもらえる。近所の人たちと顔見知りになってCDを買ってくださる方もあります。新しいお客様との出会いや層が広がり感謝しています。音楽のプロが大勢住む町なのに地元の人には意外に知られていない。この店での活動は音楽家にとって、とても喜ばしいことです」という。
嶋内久美子店長は「地域密着の店としてこの街ならではのことをしたくて演奏家を募集しました。演奏会がスタートしたことで出演したいというお申し込みも多く、改めて店舗の果たす地域の役割を教えていただけています」とのこと。店舗入口には先々の演奏予定カレンダーも貼られている。買物と音楽会はリピートには十分のコンテンツ。地域と店の「共演」とはまさにこんな取り組みにある。
Review
「共演」とは、お客様を主役にした企画をいう。イベントなどの参加型、体験型をより進化させ、お客様自身も売場に積極的に関わり、主体的に参画し、購買意欲を向上させる売り方。「大手だから」できているのではなく、「大手だって」の取り組みとして参考にしたい。人気の店は人気になるべくしてなる取り組みがある。リアルな店舗ならではの売場を使った楽しい買物スタイルは、女性客にこれからさらに求められていくだろう。
文/日野佳恵子 企画/加藤沙貴子
文/日野佳恵子 企画/加藤沙貴子
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