【特集】新シニア向けの旅行用専門サイト「たびんちゅ」(2019年5月号)
女性マーケティング特集
2019 Vol.24

INDEX
【アンノン族】動き出した新シニアの旅食趣美
1970年代、雑誌『an・an』や『non-no』の影響を受け、さまざまな土地へ旅行した「アンノン族」と呼ばれる若い女性たちがいた。それから半世紀近くたち、彼女たちの中心は60代以上となっている。若い頃、積極的に消費をした彼女たちは今も変わらずアクティブで、衣食住や美容、健康、旅行などへの関心が高く、従来のシニアのイメージを塗り替えようとしている。昭和・平成を生き、新元号を迎え新シニアとなる60代以上の女性たちが関心を持つ領域を探る。
取材・文/長濱有莉、水沼遥、岡崎彩子
取材・文/長濱有莉、水沼遥、岡崎彩子
新シニア向けの旅行用品サイト 機能×デザインが人気商品の共通点 「たびんちゅ」 株式会社ディノス・セシール
シニアといえば旅! ディノスの旅行用品専門サイト
カタログ・テレビ通販を手がけるディノスが展開する、アクティブシニア向けの旅行用品専門サイト「たびんちゅ」が好調だ。スーツケースやバッグをはじめ、旅行関連グッズを500点以上取り扱う。ディノス全体でユーザーの主体が50代にシフトしてきている中、特にたびんちゅの利用者は50歳以上の女性が約6割に上る(図1)。
同社事業開発本部の清水正人さん、望月廣幸さんに、人気の商品や品ぞろえのポイントについて取材した。
たびんちゅは2013年7月、ディノスオンラインショップ内にオープンした。清水さんは「シニア向けの新規事業プロジェクトが立ち上がり、シニアについて調べたところ、“旅”は必ず出てくるキーワードだと気がつきました。ところが、ディノスオンラインショップやカタログでは旅行用品をあまり取り扱っていなかったんです。そこで、旅行用品を集めたオンラインショップを企画しました」と当時を振り返る。
たびんちゅは自社開発は行わず、各メーカーの商品を仕入れ、販売する。当初はスーツケースを中心にそろえた。その後、1泊や日帰りのちょっとした旅行にも対応できるバッグや旅行関連グッズを取り扱ったとこ
ろ反響があり、現在はそうした周辺アイテムが主力になりつつある。たびんちゅの売れ筋ランキングを見ると、スーツケースの中で荷物を小分けにするポーチや、キャリーケースのキャスターカバーなどが上位に並ぶ。
同社事業開発本部の清水正人さん、望月廣幸さんに、人気の商品や品ぞろえのポイントについて取材した。
たびんちゅは2013年7月、ディノスオンラインショップ内にオープンした。清水さんは「シニア向けの新規事業プロジェクトが立ち上がり、シニアについて調べたところ、“旅”は必ず出てくるキーワードだと気がつきました。ところが、ディノスオンラインショップやカタログでは旅行用品をあまり取り扱っていなかったんです。そこで、旅行用品を集めたオンラインショップを企画しました」と当時を振り返る。
たびんちゅは自社開発は行わず、各メーカーの商品を仕入れ、販売する。当初はスーツケースを中心にそろえた。その後、1泊や日帰りのちょっとした旅行にも対応できるバッグや旅行関連グッズを取り扱ったとこ
ろ反響があり、現在はそうした周辺アイテムが主力になりつつある。たびんちゅの売れ筋ランキングを見ると、スーツケースの中で荷物を小分けにするポーチや、キャリーケースのキャスターカバーなどが上位に並ぶ。
バッグの人気色は「黒」 見た目と機能の両立が重要
たびんちゅの仕入れは望月さんが全て担当している。取り扱いを決めるポイントについて尋ねると、「自社のお客さまに合っていると思うものを選びます。例えば、年齢が上がってくると体力的なこともあるので、軽さは重視します。デザインも無機質な男性的なものより、女性的だと感じるものを選ぶようにしています」と答えてくれた。
スーツケース、バッグ、旅行小物の3つのカテゴリで人気商品をいくつか紹介する。
スーツケースではストラティックの「レザー&モア」(写真4)や、エースの「ハント」が人気。デザイン性と軽量といった機能性に優れた、機内持ち込みサイズ以下の小ぶりなものの需要が高い。中~高価格帯が選ばれることが多く、女性たちが質や見た目を重視していることがうかがえる。
バッグでは、エースの「フロミニン」のボストンバッグやリュックをはじめ、肩にかけられ両手が自由になるタイプが人気(写真5)。光沢素材や革製など、デザインや色柄がシックな商品が好まれるという。
スーツケースとバッグで人気の色を見てみると、「黒が8割です」と望月さん。黒は旅行中のさまざまなファッションに合わせることができ、汚れや傷にも目立ちにくい。女性たちが実用性を意識している姿が見える。
一方、旅行小物はカラフルな商品も人気。ソロツーリストのランジェリーバッグは、「スーツケースを開けたときに中身が見えない」「はっ水加工」「柔らかな色合い」 という点が支持されている(写真6)。また、たびんちゅユーザーの年齢層ならではといえる売れ筋商品が、ペーパーショーツ(紙おむつ)だ。商品のページには、「一週間ほどの旅行に持っていき、とても重宝しました」や「最初は少し抵抗があったのですが、ペーパーショーツだということを忘れるくらいの使い心地でした」といったクチコミが並ぶ。旅行中の下着の洗濯や尿もれが気になる女性にとっては、旅行を快適に過ごすための実用的な商品といえる。
たびんちゅの人気商品からは、「機能的でありつつ、デザイン性も妥協しない」といったアイテムが女性の心をつかんでいることがわかる。
スーツケース、バッグ、旅行小物の3つのカテゴリで人気商品をいくつか紹介する。
スーツケースではストラティックの「レザー&モア」(写真4)や、エースの「ハント」が人気。デザイン性と軽量といった機能性に優れた、機内持ち込みサイズ以下の小ぶりなものの需要が高い。中~高価格帯が選ばれることが多く、女性たちが質や見た目を重視していることがうかがえる。
バッグでは、エースの「フロミニン」のボストンバッグやリュックをはじめ、肩にかけられ両手が自由になるタイプが人気(写真5)。光沢素材や革製など、デザインや色柄がシックな商品が好まれるという。
スーツケースとバッグで人気の色を見てみると、「黒が8割です」と望月さん。黒は旅行中のさまざまなファッションに合わせることができ、汚れや傷にも目立ちにくい。女性たちが実用性を意識している姿が見える。
一方、旅行小物はカラフルな商品も人気。ソロツーリストのランジェリーバッグは、「スーツケースを開けたときに中身が見えない」「はっ水加工」「柔らかな色合い」 という点が支持されている(写真6)。また、たびんちゅユーザーの年齢層ならではといえる売れ筋商品が、ペーパーショーツ(紙おむつ)だ。商品のページには、「一週間ほどの旅行に持っていき、とても重宝しました」や「最初は少し抵抗があったのですが、ペーパーショーツだということを忘れるくらいの使い心地でした」といったクチコミが並ぶ。旅行中の下着の洗濯や尿もれが気になる女性にとっては、旅行を快適に過ごすための実用的な商品といえる。
たびんちゅの人気商品からは、「機能的でありつつ、デザイン性も妥協しない」といったアイテムが女性の心をつかんでいることがわかる。
電話番号を外しウェブのみに コンテンツの充実で引きつける
オープン当初は「シニアは電話も必要だろう」とサイトにコールセンターの電話番号を記載していた。しかし実際にはウェブからの注文がほとんどで、スマートフォンを含むモバイル端末でのアクセスの割合も年々増加している(図1)。これからのシニアには、ウェブページを充実させることで十分な訴求ができるようだ。
充実させる方法の1つに、たびんちゅは旅行に関する読み物のページに力を入れている。写真家が撮影のコツを解説するコラムや、歴史家が江戸の名所を紹介するコラムなど、旅に出たくなる情報を発信。更新するたびに見にくるユーザーは一定数おり、たびんちゅがユーザーとの接点を持ち続けるのに一役買っている。
また、商品写真の点数も心がける。「女性は男性よりも細部を気にされることが多いので、機能面や内側もわかるよう、多めに掲載しています」と望月さんは話す。
ここ数年、ディノスオンラインショップ全体を見ても「旅の装い」は50代以上の女性に対する提案に欠かせない特集の1つだという。ファッション全般に加え、たびんちゅでバッグや小物も買えるようになり、旅行に関するトータルコーディネートが1つのサイトで可能になった。清水さんは「将来的には、ディノスの服、たびんちゅのスーツケースで行くような主催旅行も企画したい」と展望を語る。30年ほど前、ディノスには旅行部があり、シンガポールへの送客数が1番だったという。そのころ旅行をした世代がシニアとなり、たびんちゅ(ディノスオンラインショップ)を軸に国内外をまた旅する時代が、今後訪れるかもしれない。
充実させる方法の1つに、たびんちゅは旅行に関する読み物のページに力を入れている。写真家が撮影のコツを解説するコラムや、歴史家が江戸の名所を紹介するコラムなど、旅に出たくなる情報を発信。更新するたびに見にくるユーザーは一定数おり、たびんちゅがユーザーとの接点を持ち続けるのに一役買っている。
また、商品写真の点数も心がける。「女性は男性よりも細部を気にされることが多いので、機能面や内側もわかるよう、多めに掲載しています」と望月さんは話す。
ここ数年、ディノスオンラインショップ全体を見ても「旅の装い」は50代以上の女性に対する提案に欠かせない特集の1つだという。ファッション全般に加え、たびんちゅでバッグや小物も買えるようになり、旅行に関するトータルコーディネートが1つのサイトで可能になった。清水さんは「将来的には、ディノスの服、たびんちゅのスーツケースで行くような主催旅行も企画したい」と展望を語る。30年ほど前、ディノスには旅行部があり、シンガポールへの送客数が1番だったという。そのころ旅行をした世代がシニアとなり、たびんちゅ(ディノスオンラインショップ)を軸に国内外をまた旅する時代が、今後訪れるかもしれない。
Key Point
①自社のカタログやサイトを見直し、強化すべきカテゴリ=旅行用品を発見
②「軽さは必須、デザインも女性的」などユーザーに合った評価軸で商品をそろえる
③読み物系のコンテンツを充実させ、定期的にユーザーが訪れるサイトづくりを行う
④ディノス全体との連携で、旅のトータルコーディネートができる仕組み
①自社のカタログやサイトを見直し、強化すべきカテゴリ=旅行用品を発見
②「軽さは必須、デザインも女性的」などユーザーに合った評価軸で商品をそろえる
③読み物系のコンテンツを充実させ、定期的にユーザーが訪れるサイトづくりを行う
④ディノス全体との連携で、旅のトータルコーディネートができる仕組み
Company Data
株式会社ディノス・セシール
東京都中野区本町2丁目46番2号
中野坂上セントラルビル
PHONE:03-5353-1111
たびんちゅ:https://www.dinos.co.jp/tabinchu_shop/
株式会社ディノス・セシール
東京都中野区本町2丁目46番2号
中野坂上セントラルビル
PHONE:03-5353-1111
たびんちゅ:https://www.dinos.co.jp/tabinchu_shop/
新シニア女性をつかむ4つのポイント
①自社商品・サービスの強みを把握。価格よりも価値を重視
②「無理しない」「ラク」など、現実的な体の状態に合わせた設計がされている
③商品説明や接客などは時間をかけ、悩みや不安に寄り添い解決する
④派手すぎないイメージで自分にも取り入れられる提案がある
②「無理しない」「ラク」など、現実的な体の状態に合わせた設計がされている
③商品説明や接客などは時間をかけ、悩みや不安に寄り添い解決する
④派手すぎないイメージで自分にも取り入れられる提案がある
読売ISの調査では、女性は年齢が上がるほど「女性同士でいる方が楽しい」と感じ、食事や旅行、美術館や観劇などに積極的に友人同士で出かけている様子がわかる。調査結果は2015年のものであり、数値は現在さらに高まっていることが予想される。