【特集】仕事と育児の両立を共働き家庭で体験する研修 (2019年4月号)

女性マーケティング特集
2019 Vol.23
【特集】仕事と育児の両立を共働き家庭で体験する研修 (2019年4月号)

【Feature】 女性の仕事継続は環境重視

2018年、女性(15~64歳)の就業率が初めて7割に達し、女性が働くことは当たり前の時代になった。さらに、下図の2つの調査では、上昇志向が高まっていることがわかる。
しかし、女性は結婚や出産など、人生の転機で働き方を見直すタイミングが来る。ライフスタイルによって働き方はさまざまで、「仕事と子育てを両立できるか?」「自分らしい生き方とは何か?」という不安や疑問が浮かぶ。そうした女性一人一人が自分らしい働き方を実現できる環境を考え、選択する力を身につけられるようにサポートするビジネスが生まれている。各社の取り組みを取材した。

取材・文/長濱有莉、水沼遥、岡崎彩子

ビジネスシーンで女性が必要な環境づくり 4つのポイント

1. 「理想の自分の姿」をビジュアル化する
2. 「なんとなく不安なこと」を言語化する
3. 自分の気持ちを周囲に伝える能力を習得
4. ロールモデルと話す機会を設ける

スリール株式会社

子育てしながら働くとは? ママの状況を知る体験型研修

「子育てしながらキャリアアップする人材の育成」を軸に、仕事と子育ての両立についての研修やコンサルティングを企業向けに提供しているスリール株式会社。近年ニーズが高まっているのが、管理職と復職者が合同で受講するプログラムや、若手社員向けのプログラムだ。
研修では、「小さい子どもがいる社員にはあまり仕事をさせない方がいいのではないか」と考えている管理職や、「子どもがいることで会社に迷惑をかけるのではないか」と考えている復職者、結婚・出産後の働き方に漠然とした不安を持つ若手社員など、それぞれの固定観念を取り払い、お互いの立場や考えを理解することに重きを置く。
管理職と育児中の社員の合同研修では、それぞれの立場に向けた講義に加え、ロールプレイを行う。管理職が、子育て中の社員の立場で「クライアントとのアポイントの直前に幼稚園から呼び出しが。どういった対策を取るか?」と選択肢を選んでいくものや、上司と部下の立場を逆転した面談を行う。
若手社員向けの研修では、スリールが提携している共働き家庭の協力のもと、子育て体験も実施している。夕方に退勤し、保育園の子どものお迎え、食事、遊びなどを親に代わって受け持つというものだ(写真1.2)。
1. スリール株式会社の研修では、共働き家庭の協力を得て、保育園のお迎えなどを未婚の若手社員や大学生が実際に行う子育て体験もある
2. 子育て体験で大学生が子どもと遊んでいる様子。受け入れ家庭は子どもがさまざまな人と交流できるというメリットがある
スリールの代表取締役・堀江敦子さんは、「一人一人の価値観や背景は異なりますが、目には見えません。見えるのは相手の行動や言葉。しかも、その受け取り方は個人の価値観に左右されてしまいます。体験してみることでお互いの背景や考えを知り、協力し合えるようになります」と体験の重要性を語る。
研修を受けた企業の多くで、「社内のコミュニケーションが円滑になった」という感想が上がっている。相手の状況を理解することで、適切な接し方がわかるようになるためだ。特に研修を長期間導入している企業では、管理職が「自社では女性社員の活躍が当たり前のことになった」と話すようになり、女性活躍に優れた企業を選定する経済産業省の「なでしこ銘柄」にも選ばれるなど、目覚ましい変化を遂げているという。

変化する日本の社会構造 働き方や子育ての意識も変革を

学生のころからボランティアでベビーシッターや介護に取り組んできた堀江さん。
「子育てや介護は誰もが直面しうるライフイベントなのに、事前の学びやサポートの環境が整っていない」と感じたという。新卒で入社したIT企業でも、優秀な営業職の女性が出産を機に定時退社をするようになり、成績が下がっていく姿を目の当たりにした。状況を打開したいと周りに声をかけたが、同世代の若い同期はみんな賛同はするものの、「がんばってね」と人ごとだった。
「当事者は声を上げられず、まだ経験していない人は当事者意識がない。この負のスパイラルを抜け出したいと思いました」と堀江さんは振り返る。女性の社会進出と核家族化が進む日本だが、「長時間労働をするべき」「子どもの面倒は親が見るべき」といった昭和的な概念が変わっていない。「社会構造の変化に合わせて考え方も変えていかなければならない」と2010年に起業した。
スリール株式会社のメンバーたち。写真中央が代表取締役の堀江敦子さん

92.7%の女性は両立が不安 研修が相互理解を促す

スリールは企業向けの研修の他に、大学生が仕事と子育ての両立について学ぶ「ワーク&ライフ・インターン」というライフキャリア教育プログラムも提供している。共働き家庭での子育てを体験したり話を聞いたりといったプログラムを行うものだ。最終的には、プログラムを通じて感じた社会の問題点や解決策についての発表も行う(写真3)。
3. 大学生向けのプログラムでは、研修を通して気づいた社会の問題点や解決策を発表する最終プレゼンテーションを行う
男女を問わず大学1年生から参加でき、多様な生き方・働き方をリアルに体験することで、社会人として自分がなりたい姿を就職前に考える機会になっている。これまでに約1000人が参加し、実際に結婚・子育てをしている卒業生もいる。「リアルな子育て体験をしたことで、ワーク・ライフ・バランスが具体的にイメージできるようになり、働く自分を想像するのが楽しくなりました」といった声が上がっている。
これまでは個人参加のプログラムとして提供してきたが、今後は大学の授業に組み込んだり、企業が内定者へのインターンとして活用したりと、体験型のライフキャリア教育インフラとして広げていきたい考えだ。
さらに、2017年には「仕事と子育てを両立できるか不安」という女性たちの声をまとめ、客観的に見られるようにした冊子「両立不安白書」をリリースした(写真5)。
5. 「両立不安白書」では、女性が抱える育児と仕事を両立する不安の具体的な内容や背景を解説する
白書では「出産未経験の働く女性の92.7%が両立に不安を感じている」「不安になったシーンのうち、73.3%は会社の中での働き方や子育て中の社員を見たとき」といったアンケートの調査結果に加え、不安を抱える女性4人の座談会なども掲載している。潜在的に感じている不安を顕在化することで、管理職の男性が「女性がこんなことに悩んでいるのか」と知り、女性たちも「自分は何が不安なのか」を整理するきっかけになる。
現在は2016年に全面施行された女性活躍推進法で女性採用のニーズが高まっていることに加え採用数が多かった2007~2008年ごろに新卒で入社した女性たちが30代になり子育て世代に突入している時期。
子育てをしながらキャリアアップできる環境の整備に企業が本気で取り組む必要が出てきている。体験を通じて一人一人がお互いを理解し、不安を取り払い、誰もが働きやすい組織づくりを促すプログラムは、今後ますますニーズが高まりそうだ。

Key Point

1.仕事と子育てを両立する不安や悩みを、当事者でなくても体験する研修
2.大学生のうちから仕事と子育てについて体験するプログラムも提供
3.「両立不安白書」では女性のモヤモヤを客観的に知ることができる
4.お互いの立場を理解することで、適切なコミュニケーションがとれるようになる
Company Data

スリール株式会社
東京都文京区本郷3-40-10 三翔ビル本郷7F 小野田高砂法律事務所内 social hive HONGO
PHONE:03-6801-8335
SITE:https://sourire-heart.com/

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