【特集】アンノン族の聖地で半世紀続くスポット「萌木の村」(2019年5月号)

女性マーケティング特集
2019 Vol.24
【特集】アンノン族の聖地で半世紀続くスポット「萌木の村」(2019年5月号)

【アンノン族】動き出した新シニアの旅食趣美

1970年代、雑誌『an・an』や『non-no』の影響を受け、さまざまな土地へ旅行した「アンノン族」と呼ばれる若い女性たちがいた。それから半世紀近くたち、彼女たちの中心は60代以上となっている。若い頃、積極的に消費をした彼女たちは今も変わらずアクティブで、衣食住や美容、健康、旅行などへの関心が高く、従来のシニアのイメージを塗り替えようとしている。昭和・平成を生き、新元号を迎え新シニアとなる60代以上の女性たちが関心を持つ領域を探る。
取材・文/長濱有莉、水沼遥、岡崎彩子

アンノン族の聖地・清里で半世紀続くスポット 本物を貫き地元の魅力を発信する 「萌木の村」 萌木の村株式会社

萌木の村の全体マップ。約1万坪の敷地に20を超える施設があり、散策や食事、買い物を楽しめる
本物を貫き地元の魅力を発信する。アンノン族の聖地・清里で半世紀続くスポット

清里ブームに沸いた 1970~80年代

 1970~80年代、「高原の原宿」として若者たちの人気を集めた山梨県・清里高原。ファッション雑誌『an・an』『non-no』が清里を取り上げたことから、アンノン族が大挙して訪れ、清里ブームが起きた。街中にはタレントショップやペンションなどが次々と軒を連ね、ガイドブックを持った若い女性たちがそぞろ歩いた。そんなブームが過ぎ去った今も、清里において本物志向を貫き、多くの観光客を引き付けるスポット「萌木の村」の創業者・舩木上次さんを取材した。
 JR清里駅から徒歩10分ほどの場所にある萌木の村は、広大な敷地内にナチュラルガーデンがあり、それを囲むようにホテルやレストラン、オルゴール博物館などが立ち並ぶ。クラシックなメリーゴーラウンドもあり、まるでヨーロッパの田舎町に迷い込んだかのような気分を味わえる場所だ。
 萌木の村の原点は1971年。清里で初めての喫茶店「ロック」を開業したことが始まりだった。1978年にはホテル「ハット・ウォールデン」をオープン。その後もバレエスクールやオルゴール博物館をオープンさせるなど、次々にその規模を拡大させた。
 一方、ブームの真っただ中にあった清里は、観光客目当てのファンシーショップなど、どこかメルヘンチックな建物が並ぶ雑多な雰囲気にあふれていた。そんな状況を舩木さんは、「遠景は美しいのに近景が汚い。せっかく美しい緑や水があるのに、その良さに地元の人たちが気付いていないと思いました」と振り返る。
 ブームに沸く周囲とは一線を画する形で、萌木の村は「ちゃんと文化のあるものを取り入れよう」と“本物”にこだわり、クラフトマンのレザークラフトやドライフラワー、焼き物などを提供。一過性のブームではなく、職人が作った本物を届けるという、確固たる方向性を示していった。
「 萌木の村 ROCK」。年間15万食を売り上げるカレーやクラフトビールなど、ROCKを目当てに訪れる人も多い 
毎年7~8月に野外劇場で開催するフィールドバレエ。初年度の1990年に350人だった観客は、今や1万人を超える 
舩木さんがまちづくりの勉強に向かったヨーロッパでオルゴールと出会い、「清里にも文化を取り入れたい」とオープンしたオルゴール博物館

ブームに左右されない 本物志向の場所づくり

 バブル崩壊後、清里ブームが下降線をたどり始めると、萌木の村とそれ以外のスポットの明暗は際立っていった。観光客の足が遠のく中、萌木の村はさらに本物志向に磨きをかけるべく、清里にある美しい水と豊かな自然に注目した。それは折しも1994年の酒税法改正により、クラフトビールの製造が解禁となった頃。ミネラルを豊富に含む清里の水を生かしたクラフトビールの製造に乗り出した。醸造家の手で丁寧に作り上げられたビールは人気を集め、2015年に国際的なビールの審査会「インターナショナル・ビアカップ」で金賞に輝いたのを皮切りに、2017年までに世界一を3回獲得。国内外で高く評価されるようになっていった。
 「萌木の村」の名づけ親は、清里ブームのころに『non-no』副編集長だった大川邦之さん。彼は舩木さんに「ナチュラルで落ち着いた場所を築くべき」と話したという。その考えは、1930年代に清里を開拓し、幼少期の舩木さんにも影響を与えたポール・ラッシュ博士の「田舎で“らしく”誇りを持って生きる」という精神と合致していた。そうした意志をベースに、萌木の村は形作られていった。
 その考えが最も具現化されているのが、イギリス人のガーデンデザイナー、ポール・スミザーさんが手がけるガーデンだ。化学肥料を一切使わず、四季折々の草木がその生命力をいきいきと輝かせる庭には、たくさんの鳥やチョウが訪れる。その居心地の良さは人間にも共通するようで、年々クチコミで来場者が増えているという。さらに毎年夏には、自然の中で踊るフィールドバレエの公演を披露。舩木さんは「バレエになじみがない人にいきなり来てもらうことは難しいですが、その魅力を知ってもらおうとするのがとても面白いと感じています」と語り、庭づくりと同様、萌木の村ファンの開拓にも手間を惜しまない姿勢が
うかがえる。
ポール・スミザーさんが手がけるナチュラルガーデンは、八ヶ岳の石や山野草などほとんど地元のもので構成されている

五感で学び、気づきを得る 磨かれる消費者の価値観

現在の萌木の村の売り上げは年間およそ10億円。清里ブームの頃はおよそ9億円で、清里全体は衰退したが、萌木の村はむしろ微増している。来場者数も当時とほぼ変わらず、50万人ほどで推移しているという。そのファン層を分析すると、年齢ではなく、価値観で区切ることができるという。「全体的には女性の方が多く、クリエーティブな感覚を持ち、知的なものを五感で取り入れたいと考える人たちに支持されているようです。『婦人画報』や『家庭画報』など、ハイカルチャー志向の雑誌の編集者が興味を持ち、取り上げてくれていると感じています。価格勝負になると大手企業に負けるが、萌木の村は価値で勝負し、感動を提供できればと考えています」と舩木さんは話す。 当時アンノン族だった人たちは、今や60代のシニア世代となった。彼女たちは、高度経済成長期の真っただ中に青春時代を迎え、新しい物が波のように押し寄せた時代を経験し、年月を経て物の価値を見極める力を身に付けてきた世代。本物を追求してきた萌木の村の魅力の理解者となり、萌木の村のファン層をけん引しているといえる。
 今後萌木の村が目指すのは、スタッフの質を上げていくこと。そのためにもスタッフ自らが五感で学ぶことを実践させていくという。「物まねではなく、価値をつくることが大切。これからも質の追求を続けていきたいです」と舩木さん。
 清里の持つ魅力を見いだし、さらに磨きをかけていく萌木の村の姿勢は、これからのシニアへの打ち出し方の参考になると同時に全国の共通課題である「地方創生」のヒントをも提示している。
萌木の村の創業者である、萌木の村株式会社 代表取締役社長 舩木上次さん
Key Point

①ブームに左右されず本物志向を貫いたことで半世紀近く続く、清里の観光スポット
②オルゴール博物館やバレエなど、文化的要素を取り入れ、芸術や学びを提供
③「本物を楽しみ、学びたい」という価値観の顧客とマッチし、ファンが深化
④大手に負ける価格勝負はしない。価値と感動を提供し、唯一無二の存在を確立
Company Data
萌木の村株式会社
山梨県北杜市高根町清里3545
PHONE 0551-48-3522
http://www.moeginomura.co.jp/

新シニア女性をつかむ4つのポイント

①自社商品・サービスの強みを把握。価格よりも価値を重視
②「無理しない」「ラク」など、現実的な体の状態に合わせた設計がされている
③商品説明や接客などは時間をかけ、悩みや不安に寄り添い解決する
④派手すぎないイメージで自分にも取り入れられる提案がある
読売ISの調査では、女性は年齢が上がるほど「女性同士でいる方が楽しい」と感じ、食事や旅行、美術館や観劇などに積極的に友人同士で出かけている様子がわかる。調査結果は2015年のものであり、数値は現在さらに高まっていることが予想される。

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