【注目ビジネス】若者の入学が減少していく大学。シニアを受け入れ、 新たな学生層の創出と生涯学習の場を提供(2017年9月号)
2017 Vol.4

① 神戸山手大学のシニア学生と若い学生が交流する様子。
神戸山手大学
大学に入学する18歳人口が減る一方、シニアが増加する少子高齢化社会。シニアを学生として積極的に受け入れる大学の取り組みを紹介する。
減少していく18歳人口。 多くの大学が学生集めの苦境に
近年、大学関係者が頭を悩ませる「2018年問題」を知っているだろうか。現在、短大や専門学校などを含めた大学進学率は80%に達し、頭打ちの状態。さらに18歳の人口は、ピークだった1992年の205万人に対しここ数年は120万人程度で推移。これが2018年ごろから減少していくと推測される。つまり大学に進学する18歳の人数は減少の一途をたどり、大学が淘汰される時代が訪れる、というのだ。
学びたい意欲を持つシニアを 学生として受け入れる
③ 50歳以上、30歳以上を対象としたパンフレット。
一方で増えていくのがシニアの人口だ。2015年の世論調査では「もう一度学んでいる・学びたい」と回答した数が50代は58.2%、60代は46.7%、70代も28.5%と、学習意欲の高さもうかがえる。こうした背景の中、入試の特別枠や学費の一部免除といった優待制度を設けた“シニアが入学しやすい”大学が現れている。都市部に学生を奪われがちな中で独自の特色を打ち出すためか、地方の大学が多い。中でもシニア学生を積極的に受け入れているのが、兵庫県神戸市の私立大学、神戸山手大学だ。
大学のカリキュラムに「挑戦すべき目標」と取り組むシニア
②シニア学生と若い学生からなるハイキング同好会。
神戸山手大学は2008年から「シニア50+(フィフティプラス)」入試制度を実施。50歳以上を対象にエントリーシートと面談で受験を行い、合格者には返還不要で年額40万円を4年間給付する。この制度を利用して毎年10名前後が入学し、全体の定員の約1割がシニア学生だ。女性比率が高く、学び直しを目的に来る。今年も長年ブティックを経営していたが店を引退、新たに民泊ビジネスを始める目標で入学した女性がいる。シニア学生の獲得は同大にとって学生募集の柱の一つとなっており、説明会は夏のオープンキャ ンパス以外に年3回実施している。シニアが同大を知るきっかけは、シニアの日常の情報収集の手段にのっとって、在校生・ 卒業生のクチコミ、地元の新聞や広報誌、電車内広告が多い。
シニア学生は一般の学生と同様のカリキュラムで学び、勉強以外にサークル活 動や大学祭にも積極的に参加している(写真①②)。キャンパス内には「シニア交流室」を開設、シニア学生同士やシニアと若い学生の交流が積極的に行える環境が整備されている。
同大で学んだシニア学生は「心の充実には学びが一番だと発見した」と語る。「シニア50+」制度は、新たな学生層を求める大学と意欲的なシニアの双方に恩恵を与えている。
シニア学生は一般の学生と同様のカリキュラムで学び、勉強以外にサークル活 動や大学祭にも積極的に参加している(写真①②)。キャンパス内には「シニア交流室」を開設、シニア学生同士やシニアと若い学生の交流が積極的に行える環境が整備されている。
同大で学んだシニア学生は「心の充実には学びが一番だと発見した」と語る。「シニア50+」制度は、新たな学生層を求める大学と意欲的なシニアの双方に恩恵を与えている。
BUSINESS DATA
神戸山手大学
兵庫県神戸市中央区中山手通6-5-2
PHONE:078-371-8000
SITE:www.kobe-yamate.ac.jp/univ/
兵庫県神戸市中央区中山手通6-5-2
PHONE:078-371-8000
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Review
生涯学習の場の提供があることで、シニアたちは新たな生きがいを発見している。学びやすい環境作り、さまざまなプログラム、日常の情報収集の手段に合わせた告知でシニアは集まる。